
エンパワメントについて知りたい人「介護におけるエンパワメントについて知りたい。介護職としては、利用者に対してエンパワメントをしていかないといけないって聞いた。エンパワメントってどのようなことを指すのかな?また、具体的にどのようなかかわりをしていけばいいの?」
こんな疑問を解決します
この記事の内容
こんにちは、せいじです。
介護の仕事を20年以上しており、現在は介護の研修の講師やコンサルタントの仕事をしています。
さて、介護が必要な高齢者の支援において、エンパワメントが重要だ、なんて言葉を聞いたことがあるでしょう。
とはいえ、日常生活の中では聞きなれない言葉でもありますよね。
エンパワメントとは、いったいどのような意味があるのでしょう。そして、具体的にどのような支援をしていけばいいのでしょうか。
介護におけるエンパワメントとは、かんたんにいうと利用者の意欲、能力を引き出すかかわり、ということになります。
というわけで、今回は介護におけるエンパワメントの意味やかかわりについて解説します。
介護におけるエンパワメント、意味などををわかりやすく解説します
では、介護におけるエンパワメントについて見ていきましょう。
その前に、まずはエンパワメントの言葉の意味や、起源をおさえ、それから介護の現場で利用者に支援をしていく中で、具体的にどのようなかかわりをしていけばいいのかについて見ていきたいと思います。
エンパワメントとは?
エンパワメントとは、日本語で能力開花や権限付与という意味を持つ英語です。
歴史の中で「能力が劣る人」とみなされ、社会的に排除されたり、差別されたりしてきた人たちが、自らの価値や自信を取り戻し、主体的に生きることができるようになることを言います。
もともとは、世界の先住民運動や女性運動、市民運動などで始まった考え方になります。
その後、エンパワメントは広がりを見せ、企業などでも使われるようになりました。
組織全体のパフォーマンスを向上させることを目的として、エンパワメントの考え方が取り入れられるようになったんですね。
具体的には、上司の指示のもと働く部下に対して、上司の権限を移譲することにより自ら考え、行動できるようにすることで、組織の底上げが図られるようになりました。
「部下=能力のない人」から、能力を引き出す、活用できる組織づくりにおいて、エンパワメントの考え方が活用されたわけです。
そして、エンパワメントの考え方はさらに広がっていき、医療、介護分野でも用いられるようになったのです。
介護におけるエンパワメントの意味
介護におけるエンパワメントとは、老化や障害、病気によって、自分で生活することが困難になり、自分らしい生活をすることに意欲を失ってしまった人の、意欲や能力を取り戻すための関わりです。
介護が必要になった方は、それまで当たり前にやってきた、そしてほとんどの人が当たり前にやっている日常生活行為ができなくなります。
自分でしたい、自分の思うような生活がしたい、という欲求が満たされない状態が続くと、意欲を失ってしまう、つまりパワーレスと呼ばれる状態になってしまいます。
私たち介護職は、パワーレスの状態になった高齢者に対して、もう一度自分らしく生きていこう、できることをやろうという意欲、能力を引き出す関わりをしなければなりません。
このような支援を、エンパワメントと言います。
要介護高齢者に対する具体的なエンパワメント
自分で日常生活を完結できなくなり、それまで担っていた社会的な役割、家族の中での役割を果たせなくなった、それどころか、家族やその他の人の手を借りなければ、日常生活ができなくなった要介護高齢者は、自分の価値を見失ってしまいます。
自分にはもう価値がない、生きている意味がない、人に迷惑をかける存在になってしまった、そんな意欲を失ってしまった状態の要介護高齢者に対して、私たちは、その人がもう一度自分に価値を感じられるようなかかわりをしなければなりません。
要介護高齢者の声に耳を傾け、そして、人の役に立っているという思いが持てるような役割づくりをしていくことで、自分の価値を見出すことができ、自分らしく生きることへの意欲を取り戻すことができるようにになります。
エンパワメントの対象は高齢者だけじゃない
ここからは、高齢者以外に対するエンパワメントについても見ていきましょう。エンパワメントの歴史で見てきたように、エンパワメントとは介護が必要な高齢者だけに用いる関わり、言葉ではありません。
そのほかの場面でも、エンパワメントをすることが大切です。
家族に対するエンパワメント
介護職は、高齢者の介護をする家族に対してもエンパワメントを行います。家族の介護力を支えることが、高齢者の自宅での生活を継続できることにつながるからです。
家族に対するエンパワメントの目的をまとめると、次のようになります。
家族に対するエンパワメントの目的
- 介護に対する意欲を取り戻す
- 介護技術を高める
自宅で介護をするということは、心身ともに非常に負担のかかることです。ですから、どれだけおじいちゃん、おばあちゃんに対して想いを持っていても、長期間続くと意欲が低下する、そして、時として失ってしまうこともあります。
介護職は、家族の介護に関する日々の悩みを聞いたり、時には愚痴を聞いたりすることによって、低下した介護への意欲を取り戻すことができるよう支援していくのです。
また、意欲だけでなく、介護技術を指導することも、家族のエンパワメントになります。なぜなら、本来持っている能力を、方法を伝えることによって発揮できるようにする関わりになるからです。
介護技術が上がることは、家族の介護負担の軽減につながります。専門的には、レスパイトケアの一つになるわけですね。
自宅で生活を継続するためには、家族の介護力が重要になります。家族の介護への意欲を高め、そして介護の負担を軽減することにより、高齢者の自宅での生活を継続することにつながるということです。
職員に対するエンパワメント
高齢者に良い介護を提供するためには、介護職などの職員の介護に対する意欲、能力を引き出すことも重要です。
なぜなら、意欲が低く、能力を発揮できていない介護職では、高齢者に良い介護を提供できないからです。
企業で行われているような、上司の権限の移譲などによって、介護職が自ら考え、それを実施できるやりがいのある職場づくりが、サービスの質を高めていくためには必要です。
介護におけるエンパワメント、意味などををわかりやすく解説します:まとめ
介護におけるエンパワメントについて書きました。
この記事をまとめます。
介護におけるエンパワメントとは?
- エンパワメントは日本語で、能力開花や権限移譲という意味
- 「能力が劣る人」と社会的に排除されていた人が人権を取り戻す運動の中で生まれた考え方
- 介護においては、介護が必要になった高齢者に、もう一度自分らしく生活するという意欲、意欲を取り戻してもらう関わりをさす
- 介護におけるエンパワメントは、利用者だけでなく、家族、職員に対しても必要
ということで、今回はこのへんで終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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