介護事故を防ぐために、ヒヤリハット報告書が重要だと言われているよね。書かなければいけないのはわかるけれど、いまいち目的とか、書き方、分析方法など、活用の仕方がわからないんだよね。チームのみんなで取り組んでいけるよう、ヒヤリハットを詳しく知りたい。
こんな疑問を解決します
この記事内容
介護事故を防ぐために重要な「ヒヤリハット」、しかし、活用できている施設が少ないのが現状ではないでしょうか。
ヒヤリハットの提出を促しても、なかなか件数が上がってこなかったり、あがってきたヒヤリハット報告書の分析が十分でなかったり、といったことがあると思います。
今回の記事では、ヒヤリハットの定義や目的、活用方法について書いていきます。
介護のヒヤリハットとは?定義や目的
ヒヤリハットはハインリッヒの法則に基づいています。
ハインリッヒの法則の詳細についてはリンクを貼っておきますので、ご覧ください。
介護現場でのヒヤリハットの定義
介護現場におけるヒヤリハットとは、次のようになります。
たとえば、転倒はしなかったが、つまずいたり、バランスを崩したり、膝折れしたりして、転倒してもおかしくなかったと思われるような事例です。
このような時、「ヒヤリ」としたり「ハッ」としますよね。
その言葉を使って「ヒヤリハット」と表現しています。
ヒヤリハット報告書の目的
ヒヤリハット報告書の目的は、事故に直結する可能性のあった出来事を見過ごさないためです。
事故にまで至らないと、なかなか対策を講じる動きになりにくいですよね。
しかし、ヒヤリハットした出来事は、一歩間違えれば事故になっていた事例です。
事故にならなかったのは幸運だっただけなのです。
ですから、その時点で原因を考え、対策を講じることで、事故に至るのを防ぐのが目的となります。
この数が多ければ多いほど、事故を未然に防ぐことができます。
そのヒヤリハットを多く出していくためには、気づきの力が重要です。
事故にいたらなかったケースに気づかず、そのまま放置してしまうと、やがて大きな事故につながってしまいます。
危なかった!ということに気づけるかどうかが重要なのです。
気づきの力を高めるために用いられるのが「危険予知(KYT)トレーニング」です。
危険予知トレーニングとは、施設のフロアや居室をの写真や絵を使って、どこに危険が考えられるかを想定するトレーニングです。
その名の通り、危険を予知する、つまり気づきの力を養うことができます。
複数人のグループですることで、人の意見から自分にはなかった気づきを得ることができます。
事故報告書とヒヤリハット報告書の違い
事故報告書とヒヤリハット報告書の違いをまとめると、次のようになります。
- 事故報告書は再発防止、ヒヤリハット報告書は事故の事前防止
- 事故報告書は少ない方が良い、ヒヤリハット報告書は多い方が良い
- 事故報告書は状況を詳細に、ヒヤリハット報告書は簡易的に出しやすく
事故報告書は再発防止、ヒヤリハット報告書は事故の事前防止
事故報告書は事故が起こった後に記載するものになります。
ですから、事故の再発防止を目的のひとつにしています。
一方で、ヒヤリハットは事故につながる可能性があるできごとを記録します。
目的は事故を未然に防ぐためです。
事故報告書は少ない方が良い、ヒヤリハット報告書は多い方が良い
ということは、事故報告書は少なければ少ない方が良いことになります。
事故を防ぐことができている、ということなので。
逆に、ヒヤリハットは未然に防ぐことができる事故を増やすために、多い方が良いということになります。
最終的には、ヒヤリハットになる前に防げるのがベストなので、ヒヤリハット報告書も減っていくのが理想ですね。
一番悪い状態は、事故報告書は増えているのに、ヒヤリハット報告書は少ない、という状態です。
ヒヤリハットが起こっているのに気づけていなかったり、見て見ぬふりをしている可能性があるからです。
気づきの力や、ヒヤリハットの重要性に対して、意識を向上させていく必要があります。
事故報告書は状況を詳細に、ヒヤリハット報告書は簡易的に出しやすく
報告書についても、2つには違いがあります。
事故報告書についてはその目的からも、詳細な内容が求められます。
それをもとに分析し、再発を防がなければなりません。
それに対してヒヤリハット報告書につていては、できるだけ手軽に出せるよう、簡易的なものにした方が良いです。
ヒヤリハット報告書を作成するのに時間がとられ過ぎると、利用者の生活に影響が出てしまいかねません。
また、ヒヤリハット報告書を書くのが嫌で、気づいているのに見なかったことにする、といったことが起こりえます。
だから、極力手間をかけずに作成できる様式にした方がいいですね。
ヒヤリハットの分析方法を介護に適用する(具体例あり)
ヒヤリハット報告書には、2つの分析方法がありります。
- 個別ケースの対策を講じる
- 集計してリスクの高い場所、時間帯、事故の種類を洗い出す
個別ケースの対策を講じる
個別ケースの対策を講じるとは、事故報告書と同じく、起こったヒヤリハットに対して、事故につながらないようにするための対策を講じることです。
同じようなヒヤリハットが繰り返されるようであれば、根本的に解決しなければいずれ大きな事故につながります。
集計してリスクの高い場所、時間帯、事故の種類を洗い出す
もうひとつの分析方法は、ヒヤリハットを集計して、次のようなデータを出します。
- どのようなヒヤリハットが多いか
- どの時間帯に多いか
- 発生している場所はどこか
これらのデータから、原因を探っていきます。
たとえば、「11時30分前後に、フロアで転倒のヒヤリハットが多く起きている」とします。
さらに掘り下げると、利用者が職員の気づかない状況で、自分で立ち上がったり、歩いたりして転倒するリスクが高くなっている、ということが分かりました。
では、どような原因が考えられるでしょうか。
- 食事の準備時間
- 食事のために起床介助に動いている
- 午前中の入浴介助が終わっていない
- その結果フロアが手薄になりやすい
上記のようなことが考えられかもしれません。
であれば、解決策として次のようなことがあげられます。
- 転倒リスクの少ない利用者からフロアに誘導する
- 1人、フロア待機のスタッフを配置する
- 入浴介助を早めに切り上げフロア待機する
1の転倒リスクが少ない利用者からフロアに誘導する、は一番取りやすい方法だと思います。
2については、人員不足が叫ばれている介護現場では、1日の勤務者を1人増やすのはむずかしいですよね。
介護職がむずかしいのであれば、介護補助やシルバー人材など、介護ができなくても見守りができる人を配置するのも方法ですね。
3については業務改善で解決する方法です。
午前中の入浴者を減らして、午後からに回すであったり、他の曜日に変更する、ということで、入浴介助に当たっている職員を早めにフロアに戻ってもらうのです。
このように、ヒヤリハットからリスクのポイントを洗い出し、事前に手を打つことで事故を防ぐ、というのが目的です。
介護のヒヤリハット報告書の書き方
ヒヤリハット報告書の書き方については、基本介護事故報告書と同じです。
ただし、内容については介護事故報告書ほど詳細でなくても良いでしょう。
逆に書く内容が多すぎると、ヒヤリハット報告書の数が減ってしまう可能性があります。
できるだけ簡易的にして、スタッフが出しやすいようにするのが重要です。
ヒヤリハット報告書の様式
ヒヤリハット報告書の様式に必要な内容としては、次の条件で考えるとよいでしょう。
- 個別のケースの対策を考えられる情報
- 集計する際に必要となる情報
事故報告書は、事故の再発防止以外にも目的がありました。
しかし、ヒヤリハットの目的は事故を未然に防ぐためなので、事故報告書よりも情報を絞ることができます。
必要な情報として具体的にあげると、次のような内容が考えられます。
- 発生日時
- 利用者の名前
- 年齢
- 要介護度
- ヒヤリハットの内容
- 考えられる簡単な原因、要因
できるだけ負担なく書けるような工夫が必要ですね。
A4用紙ではなく、ノートに記載する形でも良いと思います。
ヒヤリハット報告書の書き方
ヒヤリハット報告書の書き方については、介護事故報告書と基本的には同じです。
5W1Hを使って、できるだけ短い文章(箇条書きの活用)で書いていきましょう。
事故報告書の書き方を参考にしてください。
リンクを貼っておきます。
まとめ
ヒヤリハットの目的や定義、書き方について書きました。
ヒヤリハットの充実が、介護事故を未然に防ぐことにつながります。
利用者やそのご家族がつらい思いをしなくて済むよう、また介護職が心に傷を負わずに済むよう、ヒヤリハットを活用し、できる限りの事故を防いでいきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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