介護の仕事は中途採用が多く、30代~50代の未経験者の入職が珍しくありません。
一方で、高校を卒業して介護の専門学校に進学し、20代半ばでリーダーを任されているスタッフもいます。
年齢層が幅広い上に、年齢と経験年数が比例しない職場なのです。
それに加えて男性介護職が増えたこともあり、ジェネレーションギャップを含む価値観の違いや、働き方に多様性が生まれました。
そのような環境では、どうしても人間関係が複雑化しやすいのです。
こうした環境による人間関係がストレスとなって、悩んでいる介護職の人は少なくありません。
今回は特に新人職員が直面する人間関係のトラブルと、解決方法を書いていきます。
先輩スタッフによって介護のやり方がちがう
はじめて介護の仕事をする人のほとんどが経験する悩みとして、指導を受けるスタッフによって、介助の方法がちがう、というものがあげられます。
A先輩に教わった方法で介護をしたら、B先輩に「なんてやり方してるの!」と指摘されます。
渋々B先輩のやり方でやっていると「そんなやり方教えてないでしょ!」とA先輩から叱られるのです。
このときに「いや、B先輩からこうしろと言われたもので」なんて口ごたえしようものなら「自分の未熟さをB先輩の責任にした!」と陰口をたたかれ、「生意気な奴」とのレッテルを貼られてしまいかねません。
口をつぐんで忍耐で乗り切りましょう。
そのうち、A先輩がいるときはA先輩のやり方で、B先輩がいるときはB先輩のやり方で介助をせざるを得なくなります。
本来は利用者さんにあわせて介助の方法を考えるべきなのに、職員によって変えなければならなくなるなんて、おかしいですよね。
そのジレンマがストレスになるのです。
解決策「半年間がまんする」
入職してから半年もすれば、全利用者の名前、特徴を把握し、ひととおりの支援ができるようになります。
また、利用者に直接かかわる以外の業務についても、スムーズにこなせるようになるはずです。
ここまでくると、介護の方法について先輩職員から口出しされることがなくなります。
あなたの介助が「あなた自身の体格や体力、経験に合わせた方法でおこなっている」という受け取りになるからです。
その結果、ストレスから解放されるということですね。
先輩スタッフの多くの人が、あなたと同じような経験をしているにもかかわらず、新人スタッフがくると同じような指導をしてしまいます。
苦い経験をしたあなたはこれを教訓にして、後輩スタッフに同じ思いをさせないようにしましょう。
業務中心の介護を押しつけられる
年齢が高いベテランの介護職は、以前主流だった従来型の介護に染まっている方が多いです。
施設利用者の生活は「栄養補給、清潔保持、排泄の後始末がおこなわれていれば良い」という考え方です。
要は最低限生活が成り立っていればOKということです。
スタッフと利用者のコミュニケーションなどは重視されません。
これは「できるだけ少ない介護職で、できるだけたくさんの利用者支援をするための方法」から生まれた業務中心の介護です。
介護保険が施行され、介護とはなんぞや、ということが突き詰められるようになる以前の考え方ですね。
こういう方が良くおっしゃるのは「利用者の話しをゆっくり聞いている暇はないよ。そんな時間があったら掃除や洗濯、ゴミ出しをしなさい。利用者の話しをいかに短く済ませるかも、介護職の技量なんだから」ということです。
残念ながら、はた目から見ていて、利用者の尊厳を守った介護にはとても見えません。
また、その考え方を新入職員や後輩スタッフにも押しつけてくるので、自分の目指す介護とのギャップを感じてストレスになるのです。
解決策「鬼の居ぬ間の洗濯作戦」
比較的ベテランスタッフに多い考え方ですから、真っ向勝負をしても返り討ちに合う可能性が高いです。
ですから、業務中心を押し付けてくるスタッフがいないときに、利用者としっかりコミュニケーションをとるようにしましょう。
入浴介助の時間を有効に使うのもひとつです。最近はユニット型の施設が増えています。
ユニット型の入浴介助はほとんどのところが利用者と1対1になれる環境だと思います。
その時を利用して、利用者本位の介護を実践してください。
利用者との信頼関係ができて、利用者の様子に変化が見えてくれば、他のスタッフもあなたに追従する可能性があります。
声をあげられないだけで、業務中心の介護に疑問を持っている人が、実は他にもいるかもしれないからです。
同じ考えをもってくれるスタッフが増えてくると、大手を振って利用者とかかわることができ、ストレスも軽減されます。
大変な利用者から逃げる先輩スタッフ
介護の仕事はチームでおこなわれます。
チームの中に動きの悪い人がいると、どうしても自分の仕事が増えてしまいます。
もちろん人によって能力の差があるので、いっしょに働くものとして理解が必要なケースもあるでしょう。
しかし、明らかに大変な仕事から逃げるスタッフもいます。
例えば、認知症で対応が難しい利用者や、体格が大きく、介護職に負担の大きい利用者の対応が必要なときに、決まって姿を消したり、わざわざ他の仕事をしていたりします。
自分よりもたくさん給料をもらっているであろう先輩スタッフが楽な仕事をして、自分には大変な利用者の支援ばかりがまわってくるとなると、ストレスがたまりますよね。
解決策「自分の能力が向上するチャンスだととらえる」
短期的に考えると、自分ばかり大変な利用者の対応をしなければならない環境は、理不尽と感じますが、長期的に見ると大きなチャンスです。
対応が困難な利用者や、介護技術を駆使しなければならない大柄な利用者への対応は、あなたの介護能力を確実に向上させてくれるからです。
いかに、自分にも利用者にも楽な介助ができるか、とことん突き詰められる機会ととらえましょう。
長い介護職人生で、その経験は必ず役に立ちますし、あなたの価値を向上させることになります。
その積み重ねが、あなたを替えのきかない介護職に成長させ、お金という報酬になって返ってくるのです。
年下の先輩職員にため口でえらそうに話しをされる
介護は転職組が多い業界です。
年齢層も幅広く、20代そこそこでリーダーやサブリーダーといった役職を担っているスタッフがいる一方で、30代~50代の新人スタッフもいます。
転職によって介護の仕事をはじめた方は、自分よりも年齢が若いスタッフから指導を受けなければなりません。
下手したら子供ぐらいの年齢の先輩スタッフに、ため口をきかれる場合もあるでしょう。
それは他の業界でも同じかもしれませんが、介護業界は全般的に社会人として未熟な人が多い印象です。
要は一般常識を十分に持ち合わせていないため、リーダーや先輩として受け入れるのが難しいかもしれません。
「なぜこんな若造にエラそうにされなければならないんだ」というストレスを抱えることもあり得ます。
私は26歳で介護の仕事をはじめましたが、卒業後すぐに介護の仕事に進んだ人と比べるとスタートが遅く、年下の先輩スタッフが多くいました。
前の仕事で店長を担っていたこともあり、このギャップにはずいぶん苦しみました。
「本当はもっと仕事ができる人間なのに」といったプライドがなかなか抜けませんでしたね。
解決策「初任者研修の資格取得時に知り合った仲間と思いを共有する」
新しい職場でいちから仕事をはじめる場合、プライドは邪魔なものでしかありません。
いちからやり直す覚悟を決めて介護業界に入ったのですから、年齢に関係なく先輩スタッフに教えを乞わなければなりません。
そういう立場であることを、しっかりと理解する必要があります。
とはいえひとりの人間ですから、そう簡単に気持ちを切り替えるのは難しいでしょう。
私にとって救いになったのは、ヘルパー2級(現在の初任者研修)資格取得の際に知り合った仲間の存在でした。
仕事の仲間とちがって、学生時代に知り合った仲間は損得勘定や利害関係なく付き合いができると言います。
ヘルパー2級取得の研修環境も、年齢の違いやそれまでの背景に大きな違いがあるとはいえ、資格を取得するという同じ目的をもって集まった人ばかりで、立場に上も下もありません。
そこで知り合った人とは「今までの仕事を辞めて介護の仕事に挑戦する」という、共通の思いを持った仲間になれるので、就職した後の苦労を分かち合うことができるのです。
「自分と同じように、みんなも頑張っているんだ」と考えると、踏ん張ることができます。
まとめ
新人スタッフの人間関係によるストレスと、その解決方法を書きました。
これらは私が実際に経験した内容でもあります。
そして、介護施設の施設長として、新人スタッフが困らないよう腐心したところでもありました。
介護の仕事で悩んでいる新人スタッフの方の役に立てれば幸いです。
また、すでに経験を積んだ介護職の方は、新人スタッフの悩みを理解するよう努めてください。
きっとあなたも同じような経験をしてきたはずです。
自分が嫌だった経験を、新人スタッフにしていませんか?
人材不足はこれからさらに厳しくなっていくでしょうから、他業界から介護業界に転職された方がひとりでも多く介護の仕事になじめるよう、すでに働いている人は努めなければなりません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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