入職直後の新人の介護職「介護の仕事をはじめてするけど、先輩の介護職員はみんな忙しくて、ほとんど利用者さんとコミュニケーションをとってるんだよね。その間はずっとひとりだし、利用者さんからなにか頼みごとをされても判断できない。勝手に対応してしまうと叱られるし、かといって声もかけにくいし。なにをどうしていいかわからなくて不安で仕方がない。もうやめたほうがいいのかな」
こんな新人の悩みを解決する方法を書きます。
この記事の内容
新人の介護職は、とてつもなく不安な状態で仕事をすることになります。
右も左もわからないし、利用者、職員共に関係ができていないまま現場に放り出されるからです。
たいていの事業所ではまず「利用者さんとコミュニケーションをとる」ことからさせます。
「介護をするうえでもっとも大切なのが利用者とのコミュニケーションだから」という理由なのですが、新人の介護職にとっては、ひとりで放っておかれると精神的に非常につらいのです。
今回は、どうすれば新人介護職の不安を取りのぞき、退職することなく介護職として活躍してもらえるようになるかを書いていきます。
結論としては、マズローの欲求5段階説のうちの「所属と愛の欲求」を満たせばOKです。
なお、新人介護職員から見た新しい職場でなじんでいく方法については、次の記事をご覧ください。
新人の介護職がおかれている状況
新人の介護職がおかれている状況を書いていきます。
ほぼすべての介護職員が同じ道を通っています。
しかし、のど元過ぎれば熱さ忘れるの言葉通り、みなさんそのつらさを忘れてしまうのです。
また、人は自分が通った道を正義と考えやすいところがあります。
今の自分がきちんと仕事ができるようになったのは、新人のころにつらい経験をしたからだ、だから今の新人も同じ思いを経験した方がいい、という論理になりがちなのです。
ただ、その新人もあなたと同じくその状況を乗り越えられたらいいですが、それに耐えられない人も世の中にはたくさんいるのです。
目的は新人の介護職が早く事業所になれ、一人前の介護職として働けるようになってもらうことですから、自分の成功体験は横においておきましょう。
新人の介護職がおかれている状況をまとめると、次のようになります。
- 2つの人間関係を構築しなければならないストレス
- 孤独で不安な状態にある
掘り下げていきます。
2つの人間関係を同時に構築しなければならないストレス
介護の仕事のスタートは、他の仕事とくらべて精神的な負担が大きくなります。
なぜなら、2種類の人間関係を同時につくっていかなければならないからです。
まず、サービスを提供する対象である利用者と人間関係を構築しなければなりません。
介護は利用者との信頼関係が重要だからです。
排せつや入浴といったプライベートな部分の支援であったり、身体が不自由な人をベッドから車椅子に移したりする支援は、信頼関係がないと利用者が不安になったり、心地よく受けられなかったりします。
ですから、信頼関係の構築が欠かせません。
それと同時に、いっしょに働くスタッフとも人間関係を構築していかなければなりません。
介護はチームで行うものなので、チーム間の人間関係、信頼関係が重要となるからです。
人間関係をつくっていくのは精神的に負担がかかります。
それを2つ同時にやらなければならないので、精神的な負担は倍になります。
さらに業務も覚えていかなければならないため、スタート時の新人はかなりのプレッシャーやストレスを感じるのです。
孤独で不安な状態にある
入ったばかりの新人介護職は、孤独な状態にあります。
すでに職員も利用者もそれぞれ人間関係をつくっている中で、自分ひとりだけがまだその輪に入れていない状態だからです。
この状況はマズローの欲求5段階説の「所属と愛の欲求(社会的欲求)」が満たされていない状態となります。
チームから受け入れられておらず、孤独感を感じるのです。
このような状態だと、仕事にも影響が出ます。
たとえば、普通の精神状態ならあたりまえにできることも、孤独や精神的な不安からうまくできなくなります。
他の職員の目が気になり、自分のやっていることに自信が持てず、おろおろしてしまいます。
また、指示を受けてもすぐに動けなかったり、理解がむずかしかったりします。
あせり過ぎてミスをしてしまうこともあるでしょう。
チームのメンバーは精神状態を理解し、安心感を与えるためにこまめに声をかけたり、ミスがあってもおおらかに受けとめてあげることが必要です。
新人の介護職がやめない方法
新人の介護職がおかれている状況をふまえ、退職にならない方法と、早くチームになじめる方法を書いていきます。
まとめると次のようになります。
- 入職当日の朝、大歓迎する
- 常にスタッフが近くにいる環境をつくる
- 新人スタッフとの共通点を見つける
- 歓迎会を入職当日に行う
掘り下げていきます。
入職当日の朝、大歓迎する
事業所に就職が決まって、一番不安なのは最初の出勤日です。
朝からドキドキして、緊張が絶えないと思います。
面接では面接官以外のスタッフとあまり顔を合わさないので、どんなスタッフがいるのか、うまくやっていけるのか、こころよく迎えてもらえるだろうかといった不安で頭がいっぱいになります。
まずその入り口を安心して迎えられるよう、できれば顔を知っている面接官が出迎えてあげるといいですね。
そして、他のスタッフに顔つなぎしていくのがいいでしょう。
迎えるスタッフは、忙しいでしょうが、思いっきり笑顔で迎えてあげたいですね。
「あなたを受け入れますよ、いっしょに頑張っていきましょうね」という気持ちを、すべてのスタッフがしっかりと伝えてあげてください。
そうすれば、最初の不安がずいぶんと軽減されるはずです。
常にスタッフが近くにいる環境をつくる
新人の介護職には、すぐに他のスタッフに声をかけられる環境にしてあげることが必要です。
なぜなら自分で判断ができる状況にないからです。
よくありがちなのが、利用者さんとのコミュニケーションをはかるよう指示して、周囲に他のスタッフがまったくいなくなる状況です。
これをされると、新人介護職員は大きな精神的負担をかかえることになります。
たとえば、利用者さんから「トイレに連れて行って」と頼まれたとします。
新人介護職員は、その方に認知症があるのか、排せつ行為のどこができて、どこを支援しなければならないのか、といった利用者のADLなどがわかりません。
それに、なにか頼まれたら他のスタッフに確認するよう言われています。
しかし他のスタッフに聞こうにも目の届くところにいなかったり、バタバタ忙しく動き回っている状況で声をかけられなかったりします。
その間にも利用者さんからはせかされて「もうどうしていいかわからない」と困り果ててしまうのです。
万が一勝手にお連れしようものなら、カミナリものですしね。
ですから、担当者が常に一緒にいるか、必ず目に入るところにいるようにしてあげてください。
いやいや、介護の現場は忙しいんだよ。ひとりついている余裕なんてないよ。
という声も多くあがると思います。
たしかに猫の手も借りたい職場も少なくないでしょう。
そもそも人が足りていないから新人さんが入ってきたわけですしね。
では、長時間新人スタッフから離れて仕事をしなければならない場合は、いっしょに同行させるというのはどうでしょう?
これならば可能ではないでしょうか?
コミュニケーションを取りながらフロアの見守りもしてもらいたい、という考えもあるでしょうが、それが負担になってやめてしまっては元も子もありません。
ですから、最初はなにかを期待するのではなく、まずは新人介護職がなれることを優先してあげてください。
新人スタッフとの共通点を見つける
共通点を見つけることは、人間関係を深めるために非常に有効なこととされています。
共通点があることで相手に親近感をもつことができますし、話題も広がりやすくなって、お互いの理解が深まりやすいからです。
ですからできるだけコミニケーションをはかり、共通点を見つけるようにしてあげてください。
コミュニケーションが深まると、新人介護職の「所属と愛の欲求」が満たされていきます。
相手に受け入れてもらえている、と感じることができるからです。
できだけたくさんのメンバーが声をかけ、共通点を見つけるようにしてあげてください。
簡単に言うけど、ゆっくり話をする機会なんて休憩中しかないよ。介護の現場をわかってんの?
こういった反論があるかもしれません。
たしかにゆっくり話をできるのは、同じ休憩時間にあたったスタッフだけになるかもしれません。
では、その他に工夫をしてみてはどうでしょうか。
私が施設長をしていたときは、新人のスタッフが入職したら必ず写真付きの自己PR文をつくってもらい、全スタッフの目に入る掲示板に貼るようにしていました。
そうすることで新人スタッフの趣味や簡単な経歴などを知ることができ、声をかけやすくするのが目的でした。
他にも、利用者とのレクリエーションの時間に自己紹介タイムや質問タイムをもうけ、新人介護職員を知る時間とするのもいいでしょう。
このように、ゆっくり話しができる機会を持つことがむずかしいのであれば、共通点を見つけやすい工夫をするといいですね。
歓迎会を入職当日に行う
歓迎会を入職早々に、できるなら入職当日にするのもありですね。
職場ではいろんなスタッフとゆっくりコミュニケーションがはかれないですが、歓迎会であれば可能だからです。
かりにスタッフが多くて全員と話ができなくても、ほとんどのスタッフと顔を合わせることができます。
早めに知らないスタッフをなくしておくことで、精神的に安心することができます。
出勤初日なんて、ただでさえ緊張と不安で疲れているのに、そのうえ仕事が終わってから歓迎会するなんて、逆効果じゃないの?
このような疑問もあるかもしれません。
たしかにそのとおりなのですが、だらだらとストレスのかかる毎日が続くよりも、一気に済ませてしまった方が、長い目で見た時に負担も軽くなると言えます。
また、人は食事を一緒にする人に対して、好意的な印象を受けやすいとされています。
なぜなら食事は人が生きていくうえで欠かせない行為だからです。
重要な行為をともにすることで、プラスイメージを感じやすいということですね。
まとめ
新人の介護職がおかれている状況とその環境、そして退職を防止し、早く職場になじんでもらう方法について書いてみました。
受けいれるスタッフについては、自分のときがどうだったかではなく、新人の立場を思いやって、その不安が早期に取りのぞけるよう支援してあげてください。
そうすことで、新しい力がチームに根付き、自分たちの仕事の負担を減らしてくれることになります。
くれぐれも自分たちの価値観で見て、新人スタッフをつぶしてしまうことにならないよう、お願いします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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