利用者の入浴拒否に困る介護職「入浴拒否する利用者さんがいるんだよね。昔から日本人は入浴が好きな国民性と言われているのに、どうして入浴を嫌がられるんだろう?施設だと最低週に2回は入浴してもらわないといけないし、デイサービスだと家族様の負担が増えるので、何とかしたいと思うんだけれど」
こんな悩みを解決します。
この記事の内容
介護サービスを提供していて意外と多いのが入浴を拒否する利用者です。
どうして入浴を拒否するのでしょうか?
そして、その場合どう対応するのが良いのでしょうか。
そのあたりを書いていきたいと思います。
結論としては、利用者の言葉の裏側にあることがらにアクセスし、原因を探ることが重要です。
なお、認知症の方の入浴拒否については、下の記事をご覧ください。
入浴を拒否する利用者への対応
入浴を拒否するには理由があります。
その理由を把握することがまず必要ですね。
- 入浴を拒否する理由をアセスメントする
- 入浴拒否時に利用者が言葉にする理由
掘り下げていきます。
入浴を拒否する理由をアセスメントする
アセスメントする際の注意点
- 表面上の言葉だけで判断しない
- 家族からの情報も重要
- 利用者の気持に寄り添う
認知症がある、ないにかかわらず、入浴を拒否する理由をアセスメントする必要があります。
お風呂に入りたくない、と思う理由が必ずあるからです。
入浴拒否を解決しようと思えば、理由の把握ができなければ不可能です。
その時に大切なのは、利用者ご本人の話しをそのまま鵜呑みにしないことです。
人間は関係の深さによって話す内容を変えます。
ですから、必ずしも本音を言うとは限りません。
たとえば、利用を開始したばかりで、職員との関係がまだ深まっていない状態では、すべて本音を話してくださるとは限らないということです。
こういう状況では、言葉の裏に隠れている本心を探って行く必要があります。
それと同時に、利用者が安心して本音を話せるよう、信頼関係をつくっていかなければなりません。
また、利用者自身からだけでなく、ご家族からの情報も重要です。
これまでの生活の中で、入浴を嫌がることがなかったか、入浴に対してどのような気持ちを持たれているかを確認するのです。
その中から意外な理由がわかるかもしれません。
ただし、利用者自身、家族にも言いたくない理由が隠れている場合もあります。
いずれにせよ、入浴を拒否していて、その理由をストレートに言えない状況ということは、本人にとって精神的に言いたくない理由が存在するということになります。
ですから、無理強いせずに、その気持ちに寄り添うことが重要ですね。
入浴拒否時に利用者が言葉にする理由
利用者は本音を隠して次のような言葉をで入浴を拒否されることが多いです。
- 風邪気味だからやめとく
- めんどくさい
- 疲れたから今日はいい
- 家で入れるから
この言葉が本音の場合もありますが、あまり続くようであれば他に理由がある可能性を考えるべきですね。
人はなかなか本音を話せません。
だから、周囲が理解してあげなければならないのです。
実際に考えられる入浴拒否の理由
認知症でない方が入浴を拒否する理由ってなんでしょう?
介護職やケアマネジャーを10年以上してきた私の経験も踏まえて書いていきます。
掘り下げていきます。
排せつの心配がある
入浴時によく心配されるのが、排せつです。
介護が必要な高齢者は便秘がちな人が多いです。
それを解決するために、多くの人は下剤を服用しています。
下剤の効果と相まって、入浴は排せつを促す効果があるので、入浴時にもよおしてしまうことを心配して拒否する場合があります。
特に失敗した経験のある人は、よりその思いが強くなるでしょう。
この場合は、下剤の服用時間を調整するなどの対応が必要ですね。
自分は贅沢をしているという気持ち
今の高齢者の子供時代は、まだ入浴を毎日する習慣になっていませんでした。
自宅にお風呂がない家もたくさんあった時代です。
そして、水も自由に使えない時代だったのです。
その経験によって、昼間から入浴している自分は、とても贅沢をしていると感じる利用者がいます。
水があふれたら、とても気を使われる方がおられたりしますよね。
それが原因で入浴を拒否された方も実際にいました。
身体を悪くして自分で生活できなくなったにもかかわらず、こんな贅沢をしていいのかと考えているようです。
羞恥心から人に身体を見られたくない
人に裸を見られたくないという気持ちです。
これは誰にでもあることでしょう。
特に介助を受けなければならないということは、普通に銭湯に行くよりも身体を見られます。
それが嫌だから入りたくない、と思う気持ちも理解できますね。
また、女性の方で、髪の毛が薄くなってしまっているから入りたくない、という方もおられました。
普段はごまかせても、洗髪すると薄いのがはっきりとわかります。
それを見られるのが嫌だと言うことでした。
女性にとって髪は命というほどですから、関係性が浅いうちは言いにくい理由かもしれません。
身体に傷がある(コンプレックス)
身体に手術の痕や、怪我の傷があるなどといったことも影響してきます。
私がかかわった利用者で、どうしてもデイサービスで入浴をしたくない、という方がおられました。
その方は若い時に乳がんを患われ、その傷口を見られたくないから、というものでした。
しかし、実はこれが原因のすべてではなく、もう一つ大きなことがあったのです。
この方の場合、年齢を重ねてから、乳がんの手術後の傷口から浸出液が出るようになったのです。
他の人に、自分の浸出液が出たような湯船で入浴させるのは気の毒だ、ということを思っておられました。
本当の理由がわからない間は、他の利用者に見られない状態での入浴を勧めていましたが、それでも嫌がっておられたので、頭を悩ませていました。
関係が深まってきて理由を話していただき、すべて合点がいきました。
結果として、すべての人が入浴した後、最後のお風呂にひとりで入ることで入浴を楽しむことができるようになりました。
家族に迷惑をかけてしまう
デイサービスの利用者で、入浴をすると疲れてしまって、自宅に帰ったら動きが悪くなってしまうから、という方がおられました。
家族から入浴を勧められるので言い出しにくかったようですが、本人の本音としては、普段から世話をかけているのに、入浴を楽しむことによってさらに家族に負担をかけたくない、という思いだったのです。
人の世話になるのが嫌
入浴は三大介護と呼ばれるほど、本人にも介護者にも負担がかかる行為です。
その行為の介助を受けることによって、人に世話になっていると感じるから嫌だ、という方もおられます。
プライドが高かったり、遠慮がちな人に多いかもしれませんね。
異性、同性に介助されるのが嫌
特に女性の利用者で多いのが、男性に介助されるのが嫌だという方です。
裸を見られたくない、という思いからですね。
たしかにこれまでの生活の中で、特別ではない異性に裸を見られることなんてなかったでしょうから、嫌な気持になるのは理解できます。
介護が必要になったとたん、異性に裸を見られることはいたしかたない、となるのは、女性として非常につらいことだと思います。
逆に、男性の方は、男性に介助されるのが嫌だ、という方がおられます。
女性のきめ細やかさや、かかわりのソフトさを求められるからかもしれません。
しかし、中には下心で女性の介助を希望する方も多いので、注意が必要ですね。
嫌いな職員がいる
最近の施設では、入浴は職員と利用者が1対1で行うところが多いですよね。
嫌いな人と長時間2人っきりになるのは誰でも嫌なものです。
それが理由で入浴拒否になるケースがあります。
普段介護を受けている立場上「あの職員からは介護をしてもらいたくない」とは言いにくいものです。
そのあたりをおもんばかる必要がありますね。
自分の思うような入浴ができない
自分が求めている入浴ができないから拒否される方もおられます。
たとえば次のようなことです。
- 湯温
- 湯船につかる時間の長さ
- 身体を洗う順番
- シャンプー、リンスの種類
- 入浴する時間帯
このあたりに不満があって、入浴したくない、となるわけですね。
施設や事業所では共同生活の場という側面がありますから、わがままを言いたくない、遠慮してしまう、という気持ちから、理由を言わないケースがありますね。
転倒などの恐怖がある
身体が不自由になっている利用者にとっては、裸で行動することは恐怖を感じます。
入浴は足元が滑りやすいですし、転倒した時にダイレクトに身体を痛めることになるので、恐怖心が強くなるのです。
また、介助のしかたに対しても不安な気持ちは起こりえます。
利用者が安心して浴室で行動できるような支援が必要ですね。
まとめ
認知症のない利用者が入浴を拒否する理由を考えてみました。
言葉にされる理由が必ずしも本当の理由とは限らない、ということを前提にとらえる必要があります。
言葉の裏にどういった本音が隠れているのか、その本音に寄り添い解決方法を提案することで、気兼ねなく安心して入浴してもらえるようにしたいところですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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