これから介護の仕事をしようと考えているんだけれど、介護は退職者の多い仕事だと聞いた。今の仕事をやめて介護の仕事をして、自分は続けて行けるんだろうか?どんな理由で退職しているのかを知りたいな。
こんな疑問を解決します
こんにちは、合同会社ハッピーアクト、介護のセミナー講師をしているせいじです。
今回は退職理由について取り上げていきます。
この記事の内容
介護の仕事は退職者が多いと言われている仕事です。
一般的なイメージとして「きつい・汚い・給料安い」の3Kが原因と考えられていますね。
では、実際に介護の仕事は離職率が他の仕と比べて高いのでしょうか?
また、介護職が退職する理由がどのようになっているのかを、ランキング形式で見ていきたいと思います。
介護の仕事の退職理由としてもっとも多いのは人間関係ですね。
介護職は退職者が多いのか
介護の仕事は退職者、離職者が多いと言われてきましたが、実際はどうなのでしょうか。
厚生労働省と介護労働安定センターが出しているデータをもとに、介護以外の仕事の離職率と比較していきます。
離職率の差は明らかに縮まっている
介護職の採用率と離職率
全業種の入職率と離職率
上の2つの図をご覧ください。
これまで長い間、介護の仕事は平均と比較して1%以上、離職者が多い状態でした。
しかし、平成30年のデータでは、その差が1%を下回るようになりました。
一時的に縮まったのか、それとも今後も差がなくなっていくのかはわかりません。
しかし、1%以上の開きがあったのが初めて下回ったことを考えると、今後も縮まっていく可能性があるといえます。
つまり、介護職は他の仕事と比較して、離職率が特別に高いというわけではないということです。
離職率の差が縮まった理由は?収入の改善でどうなる?
他の仕事と比較して離職者の差が縮まった理由はを考えたいと思います。
平成30年中に、特定処遇改善加算を設けることが明らかになりました。
これにより、介護職の給与はさらに改善されることになります。
それらの情報に期待している人や、安定を求める人が、正社員で働くことができる介護職から離れない、という選択をしているのだと思われます。
給与の改善が図られれば、今後さらに退職者が減る可能性は十分にありますね。
その一方で、特定処遇改善加算をどのように職員に分配するかは、ある程度事業所に委ねられています。
より多くの給料をもらうために、転職者が増える可能性も考えられます。
もう少し状況を見守る必要がありそうです。
介護職の退職理由ランキング
では、介護職の退職理由をランキング形式で見ていきます。
ランキングをまとめると次のようになります。
- 職場の人間関係に問題があったため(22.7%)
- 結婚・出産・妊娠・育児のため(20.3%)
- 他に良い仕事・職場が見つかったから(17.6%)
- 法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(16.5%)
- 収入が少なかったため(16.4%)
- 自分の将来の見込みが立たなかったため(16.3%)
- 新しい資格を取ったから(11.0%)
- 人員整理・勧奨退職・法人解散・事業不振等のため(7.1%)
- 自分に向かない仕事だったため(5.8%)
- 家族の介護・看護のため(4.6%)
それぞれの理由を掘り下げて考えていきます。
1位 職場の人間関係に問題があったため
介護職の退職理由でもっとも多いのは、職場の人間関係です。
職場の人間関係の問題とは、次のような関係性が考えられます。
- 施設長など管理者との人間関係
- リーダーとの人間関係
- 同僚との人間関係
施設長や管理者、リーダーと考え方が合わないとか、話しを聞いてもらえない、といったことが不満になって退職するケースがありますね。
また、指導担当となった人がきついことが原因の場合もあります。
他にも介護観、つまりどのような介護をするべきか、といった考えが合わず、人間関係が悪化して退職に至ることがあります。
2位 結婚・出産・妊娠・育児のため
女性の場合、結婚・出産・妊娠・育児による退職は、どんな仕事でも退職の引き金になりやすいですね。
特に介護職は肉体労働の側面もあるため、退職せざるを得ないと考えるのかもしれません。
認知症の方などの対応は精神的にも負担になります。
ですから「もう少し時間的、肉体的、精神的に負担の少ない仕事を選択しよう」と決断するのでしょう。
ただ、子育て世代が働ける職場である、とも取れます。
一旦退職した後、再び介護業界や事業所に戻ってきてもえるかどうか、が大切なポイントになりますね。
3位 他に良い仕事・職場があったため
介護の仕事よりも待遇面や仕事内容で条件が良い仕事が見つかったケースですね。
また、同じ介護職でも、今の職場よりも給料が高かったり、負担が少ないところを見つけて退職するという場合が該当します。
4位 法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため
法人や施設、事業所に対しての不満です。
次のような内容が考えられます。
- 法人がお金儲け中心で利用者のことを考えていない
- 介護職など、働く人を大切にしていない
- 人が不足していて負担が大きすぎる
法人がお金儲けのことしか考えていない、と感じると、退職するケースが増えますね。
職業倫理として許せないと感じてしまうのと、自分たちの給料に還元されないことに対する不満につながるからです。
法人の職員に対しての扱い方や、人材確保に対しての法人の姿勢、取り組みが不満で退職するケースも多いです。
現場で働いていると、法人がどのように動いているのかが見えにくくなります。
ですから、法人の思いと、現場で働いている人の思いにすれ違いが出てしまうことが多々あります。
風通しの良い職場づくりが必要ですね。
5位 収入が少なかったため
給料など、収入が少ないことが退職理由のケースです。
- 仕事量と給与が見合っていない
- 賞与(ボーナス)がない(少ない)
- 残業代がつかない
単刀直入に現在の給与に対する不満ですね。
働く側としては、収入がすべてではないとはいえ、少しでもたくさん給料をくれる職場で働きたい、と思うのは当然のことです。
特定処遇改善加算が設けられたことにより、今後改善されていくかどうかに注目ですね。
6位 自分の将来の見込みが立たなかったため
今いる職場で自分の良い将来が思い描けないというのが退職の理由ですね。
次のような状況が考えられます。
- 成果によって昇進できる体制が整っていない
- 昇給していくように感じられない
- 仕事が忙しすぎて休みが取れない
お金の問題や、仕事とプライベートのバランス、つまりライフワークバランスを考えての退職理由ですね。
今の会社では思うような将来が描けないかも、という結論に至ると、退職してしまいます。
7位 新しい資格を取ったから
介護支援専門員(ケアマネジャー)や社会福祉士の資格を取得したことで、その職種での働き口を探して退職に至るケースです。
介護職として所属している法人で空きがあればいいですが、施設ではケアマネや相談員は1~2人しか必要がないので、なれない場合が多いです。
他の法人の募集を探して転職することになりますね。
8位 人員整理・勧奨退職・法人解散・事業不振等のため
勧奨退職とは、俗にいう肩たたきのことです。
たとえば、介護職として相応しい仕事がどうしてもできない、と判断した場合に、会社と本人が話し合いを持ちます。
そして、本人も介護職として働くのはむずかしいと受け入れ、合意した場合は解雇に当たりません。
高齢で介護職としてはリスクが高くなったり、人間性の問題で虐待に走る恐れがあるなどのケースに考えられる対応です。
法人解散や事業不振については、会社が倒産したり、傾いているような状況です。
9位 自分に向かない仕事だったため
介護の仕事に向かない、と感じてやめていくケースですね。
- 排泄介助などへの抵抗がなくならない
- 重度高齢者の状態にショックを受けた
- 認知症の方への対応が無理
- 高齢者がわがままに感じる
このような理由が考えられます。
上記はすべて私が実際に管理者としてかかわったケースです。
こういった決断は本人、事業所双方にとって早い方がいいですね。
10位 家族の介護・看護のため
これはどんな仕事でも起こりえますが、自分の祖父母や両親の介護や看護が必要になり、退職に至るケースです。
介護職は介護のプロとはいえ、自分の身内を介護するのと、利用者を介護するのとでは精神的な負担がまったく違います。
利用者では許せても、身内では受け流せないことも多いのです。
物理的な問題と相まって、仕事を離れざるを得ないケースが発生してしまいます。
まとめ、関連記事のご紹介
介護職が退職する理由ランキングと、理由の解説を書きました。
これまでと変わりなく、人間関係の問題が1位という結果でした。
複数の人が集まって仕事をする以上、人間関係の問題はこれからもなくならないでしょうね。
外国人技能実習生がこれから増えていく中で、退職理由もまた移り変わっていく可能性があります。
今後を見守っていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コメント