【重要】身体拘束がやむを得ないとされる3要件をわかりやすく解説

身体拘束・高齢者虐待

特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、介護サービスを提供する事業所はやむを得ない場合を除き、身体的拘束をしてはいけないですよね。やむを得ない場合というのはどういう状況でしょうか?

この疑問を解決します。

この記事の内容

身体拘束がやむを得ないとされる3要件を詳しく解説します

身体拘束を実施することは、利用者の尊厳を傷つけるだけでなく、家族や地域の方々、それに介護職の思いも傷つけることになります。

また、身体拘束は人間を壊してしまう行為でもあります。

それについては下の記事も参考にしてください。

ですから、安易に実施できないよう、厳しい要件が定められています。

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介護保険指定基準の身体拘束禁止規定

身体拘束禁止の規定については、介護保険指定基準に次のように記載されています。

「サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」

「下肢筋力の低下および認知症によって、転倒の恐れがあるから」

「胃ろうなどの経管栄養のチューブを抜いてしまうから」

「弄便行為があるから」

といった理由で身体拘束をしてはいけないということです。

さらに次のように定められています。

介護保険指定基準上、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するための緊急やむを得ない場合」には身体拘束が認められているが、これは、「切迫性」「非代替性」「一時性」の三つの要件を満たし、かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されているケースに限られる。

単に3要件に該当するだけでなく、その判断を慎重に慎重を重ねて行わなければならないとされています。

たとえご家族が希望したとしても、要件を満たさなければ身体拘束はできません。

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身体拘束がやむを得ないとされる3要件

身体拘束がやむを得ないとされる3要件とは、次の通りです。

この3要件すべてを満たした状態でなければ、身体拘束は認められません。

  1. 切迫性
  2. 非代替性
  3. 一時性

この3要件を詳しく解説していきます。

切迫性

介護保険法指定基準上

「利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと」

利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされるとは、次のような状況が想定されます。

「切迫性」の具体的内容

  • 自殺や自分自身を傷つける自傷行為が起こりえる場合
  • 他の人の命を奪ったり、傷つける他傷行為が起こりえる場合

自殺や自分自身を傷つける行為とは?

自殺は文字通り自分で命を絶つ行為を指します。

そして、自傷行為とは、自分自身の身体を何らかの方法で傷つける行為のことです。

老人施設で起こりえる自傷行為

  • 刃物で手首を切るなど、自分の身体を傷つける
  • ひも状のもので首を吊る
  • ベッド柵や壁などに頭を打ちつける
  • ベッドからわざと転落しようとする

老人ホームで起こりえるとすれば、施設の備品やご面会に来たご家族、友人などから刃物を入手し、手首など自分の身体を傷つけることが考えられます。

また、ベッド柵や部屋の壁に頭を打ち付ける行為なども起こりえます。

他にも、ナースコールなどのコードを使って首を吊るといった行為も考えられます。

自傷行為を防ぐ方法

  • 利用者に刃物が絶対に手に渡らないようにする。
  • ひもが手に入らないようにする。コード類は束ねるなどして短くする。
  • ベッド柵や壁に緩衝材を設置する。
  • ベッドの横に緩衝マットを敷く。状況により布団を敷いて寝てもらう。

自傷行為が考えられる利用者については、周囲に道具となりえる物品を置かないよう、また面会者の方からそれらの物品が手に渡らないよう、十分な注意が必要です。

他人の命を奪ったり、傷つける他傷行為とは?

利用者が他人を傷つける行為として、老人ホームで起こりえるのは次のようなことです。

  • 車椅子に乗っている利用者を落とそうとする
  • 歩いている人を押すなどして転倒させる
  • 物を投げつける
  • ベッド柵を振り回す

身体がお元気な方であれば、車椅子に乗っている利用者を無理やり落とそうとしたり、歩いておられる利用者を後ろから押すなどして転倒させたりすることが考えられます。

他にも、物を投げつける行為や、ベッド柵を凶器にして他の方を傷つける可能性が考えられます。

他傷行為を防ぐ方法

  • 利用者に凶器となるものが絶対に手に渡らないようにする。
  • 日々の精神状態を把握し共有する。
  • 十分に見守りを行う。

自傷行為と同様、今日気になるようなものを置かない、というほかにも、利用者自身の行動に十分な注意が必要です。

非代替性

介護保険法指定基準上

「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと」

行動制限をする以外に防ぐ方法がない具体的な状況は次の通りです。

「非代替性」の具体的状況

自傷や他傷行為を防ぐには、四六時中付きっ切りで対応しなければ防げないような状況

危険な物品を排除しても、どうやっても防げない状況が該当します。

たとえば、他の利用者に危害を加える恐れがある場合、100%防ごうと思ったら付きっ切りでないと難しいと考えられます。

その場合は、身体拘束も視野にいれなければならないかもしれません。

一時性

介護保険法指定基準上

「身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること」

一時性が該当するのは次のような状況が想定されます。

「一時性」の具体的状況

治療などにより、自傷や他傷行為の改善が見込まれる場合など

なかなか該当が難しい項目ではあります。

通院で精神的な治療を行っていて、薬の調整がうまくいけば行動が改善される見込みがあるなどが考えられますね。

また、特定の対象者に対しての他傷行為であれば、本人、もしくは対象者のフロアを変更して会わない環境が整うまでの間、といったところでしょうか。

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まとめ

「身体拘束がやむを得ない」とされる3つの要件について、掘り下げてみました。

この3要件のうち、まずは切迫性をいかに解決していくかが重要となります。

つまり、自傷行為、他傷行為をどう防いでいくかですね。

身体拘束がもたらす弊害は非常に大きなものですので、可能な限り身体拘束0を目指していきましょう。

ただし、あまりにも精神的に不安定な状態だと、介護施設での生活には適さないと判断せざるを得なくなる場面もあります。

本人もさることながら、他の方に危害を加える恐れがある状態では、生活が難しいですからね。

その時は精神的な治療を重視し、入院などの方法を検討しましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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