
身体拘束にあたるので禁止すると「利用者の安全を考えていない」などスタッフから不満があがって理解してもらえません。どうやったら理解してもらえるでしょうか?
こんな悩みを解決していきます
この記事の内容
施設長やリーダー等の管理職と、現場のスタッフとでは知識量や見ている範囲がちがいます。
なので、現場のスタッフではなかなか理解がしにくかったりします。
その結果、施設長やリーダーに対して、あらぬ不満に発展することも。
現場のスタッフは、知識や理解を高めていかなければなりません。
身体拘束の知識をスタッフが身につけていないと起こりえる問題
身体拘束に対する知識が浅いと、次のような問題が起こりえます。
- 知らないうちに身体拘束をしてしまう
- リーダーに対しての不満につながる
- 施設に対しての不満につながる
これらの内容を掘り下げていきます。
知らないうちに身体拘束をしてしまう
身体拘束についてきちんと理解していないと、知らないうちに身体拘束をしてしまう可能性があります。
なぜなら、身体拘束は厳しく禁止されていますが、現場レベルでは「利用者の安全を守るため」という善意で行われる場合があるからです。
こういった根拠に基づいて、身体拘束は行ってはいけません。
なぜなら、身体拘束がやむを得ないと判断されるのは、次の3要件をすべて満たす必要があるからです。
身体拘束がやむを得ないとされる3要件については、次の記事で解説しているので、そちらを参考にしてください。
これを理解している人と理解していない人とでは、論点が合わないために話し合いになりません。
その結果、平行線をたどり、不満だけが残ってしまうのです。

でも、利用者さんが痛い思いをするのを避けたいとか、ご家族の負担を軽減したい、という理由も筋が通っているでしょ。
という反論があるかもしれません。
表面的に考えると、その理由もわからなくはありませんね。
しかし、身体拘束が及ぼす利用者への悪影響は、まだ起こっていない転倒を避けるよりも深刻なのです。
ですから、厳しく介護保険指定基準によって定められているのです。
善意でやる間違いほどたちが悪いものはありませんので、注意が必要です。
リーダーに対しての不満になってしまう
繰り返しになりますが、正しいルールを理解したうえで話しをしないと、論点がかみ合わないため、平行線をたどります。
なぜなら、話しの前提がちがうからです。
たとえば、以前私が働く施設で、利用者により自分の家という思いを持ってもらうため、居室の入り口にのれんを設置しようというアイデアが介護職から出ました。
それをリーダーを通して施設に提案したところ「ノー」の回答。
その結果、介護職は次のように受け止めました。
「施設はお金が惜しいからノーと言っている。のれんなんて大した金額じゃないのに、利用者のことを考えていない」
しかし、特別養護老人ホーム等の施設は消防法の防炎規制により「のれんやカーテンなどは防炎物品でなければならない」という定められています。
だから、どんなものでも使用して良いというわけではないのです。
つまりこの事例は、介護職の知識不足が背景にありました。
一方で、リーダーがきちんと介護職に説明していれば、誤解なく済んだはずです。
コミュニケーションが重要ということですね。
施設への不満になってしまう
リーダーが現場の介護職にきちんと説明できないと、それは施設に対する不満となります。
なぜなら、リーダーは施設の回答を介護職に伝える役割だからです。
リーダーが施設からの回答をきちんと理解し、さらに介護職が理解できるよう説明しないと、誤解を招くことになります。

リーダーとして、きちんと施設長から聞いたことをそのまま伝えていますよ!
という反論があるかもしれません。
施設長からの回答をきちんと伝えるのはいいことなのですが、もう一歩踏み込む必要があります。
なぜなら、施設長はリーダーが理解できるよう説明しているわけで、それをそのまま伝えても、介護職が理解できない場合があるからです。
一般的に介護職はリーダーよりも知識レベルが低い場合が多いですから、リーダー自身がもう一度かみ砕いて、自分の言葉でわかりやすく伝える必要があるのです。
施設長の立場としては、リーダーがどのように介護職に伝えるのかまでを考えて、話しをしなければなりません。
ここを丁寧にしておかないと、施設への不満につながります。
身体拘束についてリーダーがするべき対応
身体拘束に対して誤解が起こらないよう、リーダーがすべきことは次の2点です。
- 研修を通して身体拘束の知識をスタッフに浸透させる
- 介護職の対応によって周辺症状が起こることの理解を浸透させる
では、掘り下げていきます。
研修を通して身体拘束の知識をスタッフに浸透させる
介護保険指定基準には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護付有料老人ホームやグループホームに対して、年二回以上の身体拘束の研修を義務付けています。
その研修を通して、介護職に必要な知識を浸透させていくのです。
他の研修ももちろん重要ですが、身体拘束の研修については特に重きを置いて実施した方がいいですね。
リーダー自らが行うか、身体拘束に対して意識の高いスタッフに講師をしてもらい、全介護職に知識が浸透するようにしましょう。
介護職の対応によって周辺症状が起こることの理解を浸透させる
誤った身体拘束の原因となるのは、認知症の方の周辺症状である場合が多いです。
中核症状は認知症という病気に起因するものですが、周辺症状については周囲の人たちによる対応で発生します。
そのことを介護職がしっかりと理解し、身体拘束という手段ではなく、普段のかかわり方を見直していかなければなりません。
それを実施するためには「身体拘束」という手段を頭から消す必要があります。
手段として身体拘束があると、安易にその手段に頼ってしまう可能性があります。
しかし、最初からその手段を排除しておけば、他の方法で解決するしかなくなります。
周辺症状についての対応は、それぐらいの覚悟で深めていく必要があります。
まとめ
身体拘束の知識が不足していることで、起こりえる問題について書きました。
全職員がきちんと理解していないと、問題を防ぐことは難しくなります。
だからこそ、行政は身体拘束の研修について、資料に全スタッフが目を通していることを求めているのです。
身体拘束は正しい知識、技術を身につけることで、たいていの場合避けることができます。
しかし、知識、技術が不十分だと、介護職に必要以上の負担となり、施設に対する不満につながるのです。
ですから、普段からの教育環境が重要だと言えます。
利用者の尊厳を傷つけ、心が壊れてしまわないよう、きちんとした教育環境を整えるようにしましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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