身体拘束による弊害 4つのデメリットとは?

身体拘束・高齢者虐待

身体拘束は厳しく禁止されています。利用者さん自身はもちろんですが、その他にも悪影響が及んだりしますか?

こんな疑問を解決します。

この記事の内容

身体拘束がもたらす弊害は、利用者だけではななく、家族、地域、社会、職員にも及びます

身体拘束は利用者の尊厳を傷つけ、精神的、肉体的に大きなダメージを与えます。

影響を及ぼすのは利用者本人だけでなく、その利用者にかかわる人々、ひいては社会にも悪影響を及ぼします。

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利用者の尊厳を損なう

身体拘束を行うことによって利用者にもたらす悪影響をまとめると、次のようになります。

身体拘束がもたらす利用者への悪影響

  • 人間としての尊厳を損なう
  • 生きる意欲を失う
  • 認知症が悪化する

身体拘束は、利用者の「人」としての尊厳を損なう行為です。

なぜなら、個人の意思を無視し、行動の自由を外部から強制的に奪うからです。

良い例ではないかもしれませんが、あえて言うと、「奴隷」や「捕虜」と同じ扱いをしていることになります。

不適切とはいえ、身体拘束は利用者の安全を考えての手段ですよ。それを「奴隷」や「捕虜」と同じ扱いをしているなんてひどくないですか?

こういった反論があるかもしれません。

では、利用者さんの立場になって考えたらどうでしょうか?

たとえば、下肢筋力の低下により歩行が不安定な認知症の方が、トイレに行こうと頻繁に立ち上がるとします。

転倒リスクを考えて、車いすから自分で立ち上がれないようにしました。

介護職は転倒のリスクを避けるためにしていますが、利用者さんからしたら自分の意思でトイレに行く権利を奪われていることになります。

人にとって、失禁することがどれほど精神的に傷つくか、ほとんどの人が想像できるはずです。

もしあなたが職場で失禁し、それを上司や同僚、部下に見られたとしたら、次の日から出勤できますか?

出勤どころか、退職するぐらいの精神的ダメージを受けるのではないでしょうか。

その状況から自分の意思では逃れることができず、毎日のように繰り返されるとしたら、生きる意欲を失ってしまいませんか?

身体拘束をするということは、それをしていることになります。

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家族や地域の信頼を損なう

身体拘束を行うと、対象の利用者の家族、そしてその施設を利用している他利用者の家族からの信頼が低下します。

家族や地域の信頼を損なう理由

  • 自分の親も同じように身体拘束されるかもしれない
  • 自分も施設に入ったら、身体拘束されるかもしれない
  • 自分の親をそのような環境に置かなければならない罪悪感
  • 施設での身体拘束が口コミで広がり、地域の信頼が低下する

まず、身体拘束をしている利用者のご家族は、最初は本人のことを考えて受け入れた選択であったとしても、利用者が変わっていく姿を見て徐々に罪悪感を感じるようになっていきます。

  • 他に選択肢があったかもしれない
  • もっと良い環境があったかもしれない
  • つらい思いをさせる結果になってしまった

そういった思いが募り、悩みに変わる可能性があります。

また、他の利用者のご家族にとっては、自分の親も同じようになってしまうかもしれない、という不安を感じるようになります。

ご家族の中には、自分自身の未来につなげて考える方もいるでしょう。

それが積み重なっていくと、口コミとして広がるようになり、地域からの信頼を失うことになります。

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社会からの信頼を損なう

身体拘束が行われていると、「社会」の介護に対する信頼を失うことになります。

それによってもたらされる状況を次にまとめます。

社会からの信頼を損なう理由

  • 介護の専門性に対する信頼の低下
  • 将来の安心感の低下
  • 年老いていくことへの不安の増加

老人ホームでの虐待や死亡事件のニュースと同様に、身体拘束によっても社会の介護に対する信頼が低下します。

人は誇大認識をするようにできています。

たとえば、玄関が汚い家を見ると、実際に見ていなくてもリビングや寝室なども汚い、と思うのです。

だから、身体拘束をしている施設は、虐待もやっているんじゃないか、と考えるのです。

その結果、病気や怪我で介護が必要になった場合、施設を利用することで安心して生活することができる、という信頼感がなくなってしまい、社会全体が不安定になってしまいます。

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職員のモチベーションが下がる

身体拘束をすると、特に志の高い介護職員のモチベーションが下がります。

なぜかというと、職業倫理を守ることができなくなるからです。

介護職のモチベ―ションが下がる理由

  • 専門職としての役割を果たせないから
  • 身体的、精神的なレベルが低下していくのを見るのがつらいから
  • 介護職としての技術向上につながらないから

介護職は利用者の尊厳を守り、自立に向けた支援をしていく仕事です。

しかし、身体拘束は、その目的が達成される手段になりません。

むしろ、利用者の自立を妨げ、身体的、精神的両方の面で低下を招きます。

その矛盾に悩んで仕事に対しての意欲を失ってしまうのです。

そして、介護の仕事自体を嫌になってしまい、他の仕事を選択してしまうかもしれません。

また、介護職としての能力が向上しない、という問題もあります。

介護職は困難な対応が強いられる利用者ほど、対応を試行錯誤しなければなりません。

そうやって課題をクリアすることによって、成長していくのです。

しかし、身体拘束という手段に頼ってしまうと、試行錯誤することがなくなります。

その結果、介護職の成長する機会が亡くなってしまうのです。

つまり、身体拘束は、利用者側だけに影響が及ぶのではなく、介護職にも悪影響があるということです。

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まとめ

身体拘束によってもたらされる4つの弊害について書きました。

身体拘束が、その対象となる利用者だけでなく、いろいろなところに悪影響をもたらします。

ですから、決して安易に選択してはいけない手段なのです。

利用者の安全を確保することはとても大切なことですが、それはあくまでも人としての生活を守ったうえで、ということが前提になります。

この部分をはき違えると、利用者のプライバシーや行動の自由がないがしろになってしまいます。

それを守るために、介護職としての知識や技術を磨いていかなければならない、ということです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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