介護職からの利用者(高齢者)に対する虐待を防ぐには、どうしたらいいでしょうか?虐待のニュースを見ると明日はわが身だなと思うことがあります。具体的な方法が知りたいです。
こんな悩みを解決します。
この記事の内容
介護職による介護が必要な方への虐待が増えています。
大きなニュースとしてテレビで目にする日も少なくありません。
利用される高齢者の方も、またそのご家族も、不安な思いをされているのではないでしょうか。
心配で居室にボイスレコーダーや監視カメラを設置されていた、なんて話しもありますものね。
介護サービスを提供する人にとっては、むずかしい時代となっています。
虐待の発生はひとごとではありません。
今回の記事は、どうやって虐待から利用者と介護職である自分の身を守ることができるか、を書いていきます。
認知症に対する知識、技術を身につける
事業所側からみた介護職の虐待の発生要因として、ダントツに多かったのが「教育・知識・介護技術などに関する問題」で66%となっています。
虐待の被害者となっている高齢者の8割は認知症をわずらっています。
ですから、虐待に関係する知識、技術としては「認知症利用者の対応方法」ということになります。
認知症の利用者が虐待の対象になる理由としては、認知能力が正しく機能しない病気であるため、病気でない人と比較すると、コミュニケーションがとても難しくなるからです。
たとえば深い認知症の方だと、自分の身体の状況を把握できないまま行動します。
足の力が弱っていたり、中には足を骨折していて歩けないのに、自分で歩こうとして転倒する、といったことですね。
こういった利用者に対しては、身体拘束や暴力、暴言といった、身体的虐待、心理的虐待に発展するおそれがあります。
事実、介護職から利用者に対する虐待の6割は身体的虐待、3割が心理的虐待となっています。
認知症の高齢者が、徘徊をしたりすることを、周辺症状(BPSD)といいます。
認知症には、病気によって起こる中核症状と、その中核症状によってでてくる症状に対して、周囲がとった行動によって引き起こされる周辺症状があります。
中核症状は主に記憶力の低下であるとか、幻視や幻覚といったものがあります。
これは病気による脳の器質的な変化なので、どうすることもできません。
周辺症状は、食事をしたのに「食事を食べていない」という利用者に「もう食べましたよ!」と伝えた結果、どうにかして食事を得ようと歩き回ったり、くりかえし同じうったえをしたりするといったことがあてはまります。
周辺症状については、周囲のかかわりかたによって改善することができます。
利用者のうったえに耳を傾け、利用者の世界の中で起こっている問題に寄りそうことで、落ちついて生活できるようになるのです。
しかし、認知症を正しく理解していないと、事実とはちがう話しをする利用者に対して、正すために真っ向勝負をしてしまいます。
食事の話しであれば、実際は食べていても、利用者の中では「食べていない」ということが事実であるため、「自分はひどいあつかいを受けている」「このままでは死んでしまうかもしれない」と必死に自分の身を守る行動をとります。
介護職にとっては、利用者が思うように理解してくれないことになり、イライラが募って虐待におよんでしまう可能性があるのです。
ですから、認知症の中核症状、周辺症状への理解と、コミュニケーションのはかりかたどを習得する必要があります。
理解しあえる職場環境をつくる
介護職の職業倫理として、利用者に対してネガティブな感情を抱くのは良くないと思いますよね。
利用者に怒りを感じたり、イライラしたりするのは良くないし、好き嫌いがあってはいけないと教えられてきたと思います。
それはその通りなのですが、介護職も人間である以上、感情をもっています。
ですから、利用者とのかかわりの中で、時にはネガティブな感情をもってしまうこともあります。
その感情を利用者にだしてしまうのはダメですが、職員同士で理解しあうのは大切なことではないでしょうか?
もちろん、ネガティブな感情に輪をかけるような傷の舐めあいや、ただの愚痴の言いあい、虐待につながる感情を助長してしまっては意味がありません。
しかし、腹立たしさやつらい気持ちに寄り添い、ともに解決策を考えられるのであれば、虐待を防ぐ有効な方法になります。
こんなことを考えてはいけない、他の職員にも変な目で見られてしまう、となると、自分ひとりで抱え、どんどん精神的に追いつめてしまうことになります。
そうなると、なおさらネガティブな感情が募っていく一方になります。
吐きだして、心のを整えられる職場環境を作ることが大切ですね。
超越したものの目を意識する
日本人は昔から自分の子供に「悪いことをしたら神様が見てるよ、あとでバチがあたるよ」とか「嘘をついたらエンマ様に舌を抜かれるよ」といった話しをします。
子供のころに親からそんな話しをされた人も多いのではないでしょうか?
宗教論をするつもりはありませんが、そういったいわゆる神様の存在を意識して介護の仕事をするのも、虐待を防ぐうえで役に立つでしょう。
なぜなら、介護の仕事は利用者と1対1になる場面が多く、他の人の目がない環境で自分をコントロールしなければならないからです。
人はだれしも弱いところがあるので、人の目がないとつい気持ちがゆるんでしまったり、悪いことに手を染めてしまう可能性があります。
だからこそ、それを前提に、前述したような話しを子供のころにするようになったのでしょう。
自分がしんどいめにあったときに、それをコントロールしてきちんと対応している姿を神様が見てくれていて、あとできっと良いことが返ってくる、と考えると、少し気持ちが楽になりませんか?
また逆に、感情に流されて行動してしまったら、あとで自分に返ってくると考えると、自分を制御する理由にならないでしょうか。
監視カメラをつけるのもひとつの改善策と言えますが、それでは介護職は信用がないという前提になりますし、利用者のプライバシーを守るためにも避けたいところです。
まとめ
虐待を防止する方法について書きました。
人間は高齢になると感情のコントロールが難しくなったり、もともと持っていた気質的なものがより強くでたりするようになります。
そこに認知症が加わると、介護職としてはより対応が困難になります。
ですから、時には自分の感情をコントロールすることがむずかしくなることもありますよね。
利用者に対してネガティブな感情を持たないにこしたことはありませんが、人間である以上そうはいかないときもあります。
まずは、利用者に適切な対応ができるよう、認知症に対する知識、技術を習得しましょう。
そして、利用者はもちろんですが、自分やいっしょに働く仲間を守るために、ともに支えあい、理解しあえる職場環境を作りましょう。
また、いつでもだれかが見てくれている、見られている、という意識を持って仕事をしましょう。
虐待がゼロになることを願ってやみません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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