阪神タイガース一筋で活躍してきた鳥谷敬選手が、今期限りでタイガースのユニフォームを脱ぐことを明言しました。
今後は引退か他球団への移籍を模索する形となります。
ロッテや中日が手を上げるのではという声もありますし、他球団への流出もあり得ますね。
ファンの受け取り方としては、功労者を大切にしない球団というイメージが広がっています。
果たして、なにがあったのでしょうか。
そして、このような結末に至った原因はなんでしょう?
今回の記事は、上司と部下の信頼関係の観点をからめて考えていきたいと思います。
タイガース球団社長と鳥谷敬選手 決裂の概要
ことの発端は令和元年8月29日の、鳥谷選手と球団との話し合いでした。
鳥谷選手は球団からの呼び出しにより、社長と面談を行ったのです。
その席上では、次のような話しがありました。
「後進に道を譲り、引退して指導者になってほしい」
しかし、鳥谷選手は現役へのこだわりが強く、話し合いは物別れに終わりました。
その情報がマスコミに漏れ、今回の騒ぎに発展しています。
球団は、近年の成績、特に今年の不振や、若手が育ってきていることから、鳥谷選手を来季の構想から外しました。
しかし、鳥谷選手は生え抜き選手として球団の最多安打数を更新し、長年にわたって全試合フルイニング出場するなど、阪神タイガースの顔として活躍してきた選手です。
本人からしたら、2年成績が上がらなかっただけで、すぐに首を切るのか。
チャンスがあればこれまで通りの活躍ができるのに、と思ったかもしれません。
鳥谷選手が球団に不信感を感じているのは、神宮球場で行われヤクルトとの最終戦で、「自分にとっても最後の神宮になるかもしれない」と発言したことからも、垣間見ることができます。
なぜなら、この時点では球団とどのような話し合いがもたれたか、まだはっきりと世間には伝わっていなかったからです。
球団の最初の発言
鳥谷選手の動向に注目が集まっていた理由は、5年という長期契約が今年で満了を迎えるからです。
昨年、不振から連続フルイニング出場が途切れ、その後はレギュラーからも外れました。
今年においてはほとんど代打での出場で、8月末時点で打率.208、本塁打、打点ともに0という成績です。
これまでの野球に対する姿勢から「鳥谷選手はもしかしたら引退するんじゃないか」という見方が世間ではされていました。
これに対して球団は、当初次のように話していました。
「鳥谷選手は辞める時期を自分で選べる数少ない選手」
この発言からすれば、ファンとしては、鳥谷選手は実質戦力であろうがなかろうが、これまで球団にもたらした貢献によって、自分が納得するまで現役を続けてくれても良い、と球団は考えている、というとらえ方になります。
鳥谷選手のとらえ方「引退か移籍の二択」
その後、鳥谷選手が重い口を開くことになりました。
球団との話し合いで「引退してくれないか」と言われたと暴露したのです。
そして「引退するにせよ、移籍して現役続行するにせよ、いずれにしても阪神タイガースのユニフォームを着るのは今年で最後」と発言したのでした。
これは現役選手として、という意味だと思いますが、もしかしたら、引退後も阪神のユニフォームを着るつもりはない、という意味も入っているかもしれません。
ただ、この発言の真意として、鳥谷選手はファンの気持ちをあげました。
「たくさんの人が自分に声援をくれている。だから、今期が終わってしまう前に、阪神タイガースに所属するのが今年で最後だということを伝えたかった」とのことです。
たしかにその思いが強かったのでしょうが、一方で、話し合いでの球団の姿勢や、「鳥谷選手は自分で引退を決められる選手」という発言に対する不信感も見える発言に感じます。
球団の鳥谷選手への思いとは?
鳥谷選手が球団に対して不信感を感じているという前提で、なぜこのようなすれ違いが起こってしまったのか考えたいと思います。
まずは球団社長の立場としては、次のように考えていたのではないでしょうか。
- 年俸的に十分な評価をしてきた
- 引退でも仕方がない近年の成績
- 現役を続けられると扱いに困る
掘り下げていきます。
年俸的に十分な評価をしてきた
阪神タイガースは5年前、メジャー挑戦を表明した鳥谷選手に対して、5年20億という破格の条件を提示し、残留にこぎつけました。
遊撃手としての高い守備力、常に3割後半から4割を誇る出塁率、連続フルイニング出場、という実績はあるものの、当時33歳という年齢や、これまで一度も打撃のタイトルに絡んだことがなく、3割を記録したのも3度だけ、という選手に対して、年4億はかなりの好条件と言えます。
また、2016年、打率.236という絶不調の成績ながらも、フルイニング出場の記録があったために、鳥谷選手はスタメンから外れることはありませんでした。
そのあたりも、球団としては、鳥谷選手には十分な評価と配慮をしてきたと考えているのかもしれません。
引退でも仕方がない近年の成績
この契約の間、鳥谷選手の成績の低下は顕著でした。
守備については、守備範囲が狭まった上に、凡ミスによるエラーが目立つようになりました。
遊撃手としてのレギュラーは難しくなり、サードやセカンドにコンバートされました。
さらに打撃については、打率.230台を2度、2019年を含めると、2割そこそこの年が3度になります。
2017年には長期の不振から、連続フルイニング出場も途切れてしまいました。
今期は代打中心の出場となり、8月末時点で打率.208、本塁打、打点ともに0です。
38歳という年齢を考えても、戦力外通告されても仕方がないと言えます。
現役を続けられると扱いに困る
鳥谷選手は通算安打で球団記録を塗り替えました。
阪神タイガースの選手として、もっとも多くヒットを打った選手、ということになります。
また、連続フルイニング出場もあり、長年阪神タイガースの顔でした。
しかし、ここ2年の低調な成績に加え、代打で起用しようにも、まったく打てない状況です。
今はどうあれ、過去に実績を積み上げた生え抜き選手を、故障しているわけでもないのに二軍に落とせるわけもなく、かといって戦力として計算できないとなると、「現役を続けられると扱いに困る」というのが正直なところでしょう。
だから、きちんと花道をつくって現役を引退してもらい、コーチとして球団に残ってもらいたい、というのが希望だったと思われます。
しかし、残念ながら鳥谷選手にその思いは伝わらず、決裂する結果となりました。
鳥谷敬選手の球団への思いとは?
鳥谷選手は球団に対して、どのような思いを持ったのでしょうか。
話し合いが物別れに終わった結果から考えると、次のような思いが垣間見えます。
- 使い方次第でまだやれるのに
- メジャー挑戦をあきらめ、阪神残留を選択したのに
- 不振の原因はチーム事情にあったのに
使い方次第でまだやれるのに
鳥谷選手としては、もう少しきちんと使ってもらいたい、という思いがあるのではないでしょうか。
今年はほぼ代打での出場となっています。
試合の途中でいきなり出場し、たった1打席で成果を出さないといけない代打は、非常に難しい役割です。
ましてや、入団して間もないころから2018年途中までフルイニング出場してきたわけですから、代打の経験はほぼ0でした。
1試合、4~5打席の中で結果を出す、という闘い方が、骨の芯まで染みついていることでしょう。
本人からしたら、怪我などもなく、年齢による衰えと言われても42歳の福留選手よりもずっと若いことを考えると、レギュラーでもまだまだやれると思っているはずです。
ですから、今年の成績は使い方の問題であって、きちんとした機会が与えられれば自分はまだやれる、と思っていても不思議ではありません。
メジャー挑戦をあきらめ、阪神残留を選択したのに
2013年、鳥谷選手はメジャー挑戦を表明しました。
当時33歳と、年齢を考えると遅いぐらいですが、最後のチャレンジとしてメジャー移籍を選択したのです。
しかし、阪神タイガースからの強い残留要請があり、最終的にメジャー移籍を断念。
タイガースに骨をうずめる選択をしたのでした。
その時に球団からどのような話しがあったのかはわかりません。
球団としては残留してもらうために好条件を持ちかけたはずですし、鳥谷選手をどれだけ必要としているか訴えたと思います。
それが今になって「引退勧告」ですから、本人からしたら、メジャー挑戦をあきらめてまで阪神タイガースに残ったのに、ちょっと成績が悪くなったら手のひらを反すのか、と思ったかもしれません。
世間の見方としては、当時も、そして今現在も、メジャーに挑戦せずタイガースに残って正解だったとの見方が大半ですが、本人からしたらそうではないでしょうね。
不振の原因はチーム事情にあったのに
鳥谷選手は2016年、打率.236と極度の不振に陥りました。
その原因は、当時の金本監督から、もっと長打を打てるバッティングを!というモデルチェンジを求められたから、と言われています。
そして、長打を意識するあまり、バッティングを崩して不振に陥ったとされているのです。
2017年には、2016年以前とそん色のない成績に復活しましたが、2018年には再び不振に陥り、現在に至っています。
その過程では、ショートからサード、サードからセカンドと、文句も言わずにチームのためにコンバートを受け入れました。
やり慣れないポジションを習得するために、打撃への集中力が落ちて、打撃成績に影響したとも言われています。
鳥谷選手はプロ意識の高い人とされているので、人の責任にすることはないかもしれませんが、チームの事情で自分の持っているスタイルとは違うことを求められ、その結果不振に陥ったと考えても不思議ではありません。
不振を挽回するチャンスがもらえないまま、戦力外通告をされたことについては、納得がいかないかもしれませんね。
鳥谷選手と球団が決裂した原因は
双方の思いを見てきました。
最後に、どうして話し合いが物別れに終わり、関係がこじれてしまっているのかを考えたいと思います。
まとめると、次のような理由が考えられます。
- 球団の鳥谷選手への理解が足りない
- お互いの信頼関係が薄かった
掘り下げていきます。
球団の鳥谷選手への理解が足りない
球団の選手への理解が足りなかった可能性が考えられます。
鳥谷選手がどのような思いで近年の成績をとらえているのか、そして、来年以降どのような形を望んでいるのかを、まずは傾聴し、受容、共感する必要があります。
球団としてはこれまでの活躍を労い、その功績から今後のポストを用意し、誠意を尽くしたと思っているでしょうが、鳥谷選手の思いに十分に耳を傾けた後でないと、この提示はうまくいかないでしょう。
鳥谷選手のコメントからも、球団にはわかってもらえなかった、という感じが受け取れますね。
そうでないと、他球団への移籍の可能性を口にしないと思います。
お互いの信頼関係が薄かった
球団が思っているほど、鳥谷選手と信頼関係ができていなかったと思われます。
「引退してくれないかと言われた」という鳥谷選手の発言に対して、「そのように受け取らせてしまった」と球団側は答えています。
球団の意図がきちんと伝わる関係性ができていなかったということですね。
さらに「自分で引退を決められる選手」と球団が発言したことで、鳥谷選手はさらに不信感を募らせたはずです。
恐らく、移籍、引退のいずれにしても、阪神タイガースと鳥谷選手の間に遺恨が残るのはまちがいないでしょう。
長年の功労者でファンも多い選手だけに、非常に残念ですね。
まとめ
鳥谷敬選手の退団問題に見る、会社と社員との関係について考えてみました。
現場で働いている職員と、会社を経営している社長との間では、どうしてもすれ違いが起こりやすくなります。
それを防ぐためにも、相手の考えていることにベクトルを向け、相手の話しをしっかりと聞くことが大切ですね。
そうしなければ、鳥谷選手が持ってしまった球団に対する不信感につながります。
さて、今後どうなっていくのでしょうか。
生まれながらの阪神タイガースファンとしては、この騒動はとても残念ですね。
鳥谷選手には、できれば納得のいく形で阪神タイガースで現役をまっとうしてほしいなと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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