テレビでちょくちょく虐待のニュースが取り上げられています。以前に比べると世間を騒がせる頻度が増えているように感じるのですが、実際はどうなのでしょうか?
こんな疑問を解決します。
この記事の内容
今回は高齢者施設で介護職員による虐待について取り上げています。
虐待発生件数の推移や、種類別の発生件数、そして、虐待の種類について詳しく書いていきます。
介護職員による高齢者虐待の発生状況
まず、介護職が行った高齢者に対する虐待について見ていきます。
まとめると次のような項目になります。
- 介護職員による高齢者虐待の発生件数の推移
- 介護職員による高齢者虐待の種類と発生件数
この2点について掘り下げていきます。
介護職員による高齢者虐待の発生件数の推移
介護職員による高齢者虐待は、2010年から右肩上がりに増えています。
増えている要因としては次のようなことが考えられます。
要介護高齢者の増加
要介護高齢者は増え続けており、介護保険が施行された2000年からおよそ2倍ほどの人数になっています。
要介護高齢者が増えるということは、介護職員が介護を提供する方の人数も増えるということなので、虐待のケースも確率的に増えることになります。
2006年に施行された高齢者虐待防止法の考え方が浸透
2006年に高齢者虐待防止法(正式には高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援などに関する法律)が施行されました。
法の中には、虐待に該当する行為を発見した人は、速やかに市町村に通知する努力義務が設けられています。
これが浸透し、虐待の報告や発見が増えたと考えられます。
2011年から老人ホームが増加
2011年から2012年かけて、介護付有料老人ホームが約10万件増えています。
その後も増加しており、施設の増加により介護職員による虐待のケースも増加したと考えられます。
介護職員の増加
要介護高齢者、施設の増加に伴い、介護職員の数も増加しています。
介護職が増えるということは、単純に確立があがるだけでなく、質の担保もむずかしくなるということです。
ですので、虐待が発生する可能性も高まることになります。
虐待の種類と発生件数
高齢者虐待防止法に定められている虐待には5種類があります。
身体的虐待
身体的虐待には以下のようなものが該当します。
暴力的行為とは、殴る、叩く、つねる、といった身体に危害を加える行為です。
本人の利益にならない強制による行為というのは、たとえば、トイレに行きたくないのに無理やり押さえつけてトイレに座らせたりといったことですね。
身体拘束も身体的虐待にあたります。
緊急やむを得ない場合の要件については、次の記事を参照してください。
介護等放棄(ネグレクト)
介護等放棄(ネグレクト)とは、次のようなことが該当します。
要介護者は支援の手がないと生活ができません。
家族本人が支援できないのであれば、介護保険サービスを利用するなどして、支援の環境を整える責任があります。
それらを放棄して、放置することがネグレクトにあたります。
医療についても同様で、必要な治療を受けさせないというものですね。
他にも、車いすを使うと自分で動いて危ないから、ということで使えないようにするとか、ナースコールを鳴らせないようにするなども該当します。
これまで書いてきた内容は、要介護者の「人」としての権利です。
それらを無視するような対応が、ネグレクトにあたることになります。
心理的虐待
心理的虐待にあたるのは次のような内容です。
暴力に至らないまでも、手を上にかまえて殴るそぶりをしてみたり、強い口調で責めるなどの行為が心理的虐待にあたります。
以前、介護職が利用者を威嚇し、驚いた利用者の姿を見てあざけ笑ったりしていた様子がニュースに流れていましたね。
他にも、利用者やその家族の悪口、批判、侮辱する態度により、心理的に負担を与えることが該当します。
また、排泄介助や入浴介助の際に、臭いとか、服を脱いだ姿をばかにするなどといった行為も該当します。
文章を読んでいるだけでは「こんなことをするはずがない」と思うかもしれませんが、実際に介護施設で介護職員がしているのを、ニュースで見た人もいるはずです。
介護の仕事に慣れてしまうと、「人」の生活を支援しているという感覚が麻痺してしまうことが往々にしてあります。
「人」を人としてとらえられなくなるのです。
これを施設病と言います、このことについてはまた別の記事で書きたいと思います。
いずれにせよ、介護職としては他人事と思わず、肝に銘じておく必要があります。
性的虐待
性的虐待は次のことが該当します。
いたずらに胸や陰部をさわったり、性的な行為を強要することが該当します。
高齢者に対してそんなことがあるのか?という疑問を感じる人もいるかもしれませんが、幼児に性的な興奮を覚える人がいるように、人の性的な嗜好は様々です。
普通は理性でコントロールするものですが、おさえが効かない人も中にはいるようです。
ですから「性的虐待などありえない」ととらえてもいけませんね。
経済的虐待
経済的虐待に該当するのは次のようなことがらです。
利用者のお金を介護職が強制的に借りたり、盗んだり、勝手に使ってしまうことを指します。
過去に何度か大きなニュースになっていますね。
訪問介護の職員が利用者のカードを使ってお金を引き出したとか、タンスのお金を盗んだというケースです。
施設でも、利用者の部屋からお金を盗んだりといったことが起こっています。
そんなこともあって、老人ホーム(介護施設)ではいらぬ疑いが発生しないよう、利用者本人が自分の部屋で金銭管理することを禁止しているところが多いですね。
老人ホームには認知症の利用者もおられるので、状況を正しく認知されないまま、他の方のお金を勝手に持って行ってしまうというトラブルが考えられます。
そういったことも含めて、事前にトラブルを避けるためのひとつの手段ですね。
まとめ
介護職による要介護高齢者に対する虐待ついて書きました。
「虐待はあってはならないこと」という前提は誰もが知っているはずです。
しかし、長い間のお付き合いの中で、ついなれ合いであったり、感覚の麻痺によって虐待に及んでしまう可能性があります。
また、一時のことで感情的になってしまい、暴力に発展してしまう可能性はゼロではありません。
人間である以上、感情を持っているので、誰にでも起こりえることです。
ですので、利用者を守ることはもちろんですが、自分の身を守るためにも、虐待をしっかりと理解し、介護職として働いて行かなければなりません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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