事業所側から見た介護職による高齢者虐待が起こる原因とは?

身体拘束・高齢者虐待

介護職員による虐待はどうして起こるのでしょうか?人に暴力を振るったり、暴言を吐いたりしてはいけないというのはだれしも理解していると思うのですが。虐待に至った原因はどのようなものがありますか?

こんな疑問を解決します

この記事の内容

介護職員が利用者に虐待をした要因を、厚労省のアンケート結果により掘り下げていきます

介護職員の虐待がどのような原因で起こっているのかを、事業所側から見たアンケート結果をもとにまとめていきます。

虐待のリスクにおいて、介護職を取り巻く環境は今後も上がっていくと考えられます。

それについては別の記事で書いたので、そちらをご覧ください。

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事業所側が回答した介護職による虐待の原因

厚生労働省が行っている「高齢者虐待防止法に基づくアンケート結果」から、事業所側から見た介護職員による虐待の発生要因をもとに、考えていきます。

アンケート結果は以下の通りとなっています。

 

  1. 教育・知識・介護技術などに関する問題
  2. 職員のストレスや感情のコントロールの問題
  3. 倫理観や理念の欠如
  4. 虐待を行った職員の性格や資質の問題
  5. 人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ
  6. 虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ

掘り下げていきます。

1位 教育・知識・介護技術などに関する問題

教育・知識・介護技術が不足していると・・・・

  • 研修などの機会が十分でなく、知識を得られない
  • 身体拘束や虐待の認識なく行っている
  • 認知症の利用者に適切に対応できず、感情的になる

発生の要因として圧倒的に多かったのは「教育・知識・介護技術に関する問題」でした。

他の要因と比較して、倍以上の回答数となっています。

教育がしっかりされていないと、知識や介護技術は不足してしまいます。

たとえば、認知症の利用者は職員の関わり方によって周辺症状が発症するなど、普段の行動に大きく影響します。

適切な接し方をしていれば、穏やかに過ごされる時間が長くなりますし、不適切であれば落ち着かなくなったり、暴力的になったりします。

つまり、介護職員の知識、技術不足による不適切な対応が利用者の生活に影響を与えてしまい、その結果、落ち着かない利用者の行動を制限するために身体拘束をしたり、利用者に対して感情的になり、暴力や暴言といった行動に出てしまったり、ということが起こります。

身体拘束については、どのようなことが身体拘束にあたるのかを把握していないために、知らず知らずのうちにしてしまっているケースが少なくありません。

 

2位 職員のストレスや感情のコントロールの問題

ストレスが溜まると感情のコントロールに影響が・・・・

  • 仕事でのストレス
  • プライベートでのストレス
  • ストレスにより感情のコントロールが困難になる

介護現場は人材が不足しています。

また、人間関係が良くない職場も少なくありません。

それらにより仕事でストレスを感じたり、また仕事以外でもストレスが溜まるようなことがあると、人は精神的にイライラしたり、気分が落ち込んだりしてしまいます。

仕事中は割り切って対応しようとするでしょうが、あまりにもストレスが溜まると、感情のコントロールが難しくなります。

そして、つい利用者に対して不適切な行為に及んでしまうのです。

 

3位 倫理観や理念の欠如

倫理観や理念が欠如すると・・・・

  • 介護職としてのあるべき姿を見失ってしまう
  • 不適切な介護がまかり通ってしまう

介護福祉士には「倫理綱領」というものが定められています。

倫理綱領には、介護福祉士として守るべき職業倫理が定められています。

また、ほとんどの施設において、施設理念などが掲げられています。

それらが欠如してしまうことで、虐待に至ってしまうということです。

施設では往々にして理念がお飾りになってしまっている場合があります。

立派な理念も、職員に浸透していなければ意味がありません。

4位 虐待を行った職員の性格や資質の問題

職員の性格や資質の問題とは?

  • 暴力的、感情的になりやすい性格
  • 自分の感情をコントロールできないタイプ
  • 極端に自分中心の考え方を持っているタイプ

最初からリスクが考えられるケースと言えるかもしれません。

元々の人間性や資質に問題があった場合、やはり面接段階でいかに食い止めるかがポイントになります。

私が面接を担当していた頃も、採用、不採用の判断で重きを置いていたのは、虐待を引き起こす可能性の有無でした。

ただ、面接の時はそういったところを全力で隠してくるので、一筋縄ではいきません。

ですから、いろんな質問をする中で、その可能性を探るようにしていました。

ただし「虐待を行った職員の性格や資質の問題」が発生要因になったと答えたケースは、全体の10%程度しかありません。

ということは、虐待の9割は本人の性格や資質以外の原因で起こっているということです。

5位 人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ

人員が不足すると・・・・

  • 心の余裕がなくなる
  • 職場に対する不満がストレスになる
  • 人間関係が悪くなる

人員が不足すると、それにともなって業務が忙しくなります。

忙しくなると心の余裕がなくなり、施設や一緒に働くスタッフに大して不満を持ちやすくなります。

「人員を揃えるのは施設の責任じゃないか!」とか「こんなに忙しいのに、あの人は全然動かない」といった具合ですね。

その結果、ストレスが積み重なり、虐待行為として利用者に向いてしまうのです。

人材が不足している事業所は、全体の66%にも及びます。

ということは、虐待を起こす可能性についても、ひとごとではないということですね。

6位 虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ

虐待が起こりやすい組織の状態とは?

  • 上司と部下の考え方の乖離
  • 陰口や勝手なうわさがまん延している
  • 職員間のコミュニケーション不足

施設で一番問題となるのが、陰口や勝手なうわさ話しですね。

もっとも悪い環境と言えます。

職員が施設の不満や職員同士の不満を陰で言うケースが多くなると、かなり深刻に受け止めるべきですね。

その状態では職員は責任を持った仕事をしなくなります。

施設がきちんとした職場環境を作らないのならば、自分たちも責任を持った仕事をしない、という風になるからです。

そして、その無責任さは利用者に向くようになります。

結果、虐待行為に及んでしまうのです。

 

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まとめ

介護職員による利用者への虐待の原因について、厚労省が行ったアンケートにより掘り下げてみました。

アンケート結果にあるように、虐待した本人の性格や資質が原因で虐待が起こったとされるのは、全体のたった10%しかありません。

ということは、どんな性格や資質を持っていたとしても、虐待に及んでしまう可能性はあるということです。

自分自身がそうならないように、普段から知識や技術の向上に励んだり、自分の精神状態のケアを行ったり、職場環境の改善に努めなければなりません。

職場の環境を作っていくのは、施設長やリーダーだけの役割ではありません。

職員一人ひとりがチームを構成している一員ですから、大なり小なり影響を与えているのです。

ですから、まずは自分ができることから始めていきましょう。

たとえば、陰口やうわさ話しをしないようにする、でもいいでしょう。

そうやって自分や大切な仲間を守っていきましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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