センサーマットに疑問を持つ介護職「私の働いている介護施設では、利用者の安全のためにセンサーマットを使用しています。でも介護施設でセンサーマットは必要ですか?それで事故は減るのでしょうか?介護職の負担は減りますか?またセンサーマットの設置は身体拘束に当たりませんか?」
こんな疑問を解決します
この記事の内容
こんにちは、せいじです。
みなさんが働いている施設では、センサーマットを使用していますか?
使用しているとしたら、その目的はなんですか?
目的に対して効果を発揮してくれていますか?
もしかしたら、センサーマットがある環境に慣れ過ぎてしまって、あまり考えてこなかったかもしれませんね。
今回は、介護施設におけるセンサーマットの必要性について書いていきます。
介護施設でセンサーマットの必要性はあるか?
センサーマットの目的なども踏まえ、介護施設でセンサーマットが必要かどうかを考えていきたいと思います。
センサーマットとは?
センサーマットとは、転倒の危険が高い人に対して設置される設備です。
ベッドの横に設置され、寝ている利用者がベッドから起きてマットに足をつくと、センサーが反応してナースコールが鳴る仕組みになっています。
たくさんの要介護者に支援を提供する介護施設。
入所している利用者の中には、脚力が弱く、ひとりで歩くと転倒する危険が高いのに、認知症で理解ができず、かまわずに歩いてしまう人がいます。
そんな利用者を対象に使用されるのがセンサーマットです。
センサーマットの目的
改めてセンサーマットの目的を書いていきます。
まとめると2つの目的があります。
- 転倒リスクの高い人の転倒予防
- 介護職の負担軽減
メインの目的は転倒の危険性が高い利用者が、ひとりでベッドから降りて歩くのを防ぐことです。
センサーが鳴ることによって職員が気づき、利用者の居室を訪れて対応することができます。
センサーマットがないと、利用者が安全に寝ているかどうか、居室まで足を運んで確認しなければなりません。
センサーマットを設置しておけば、反応したときに居室に行けばいいので、巡回の手間を減らすことができるのです。
利用者の安全と職員の負担を軽減するセンサーマットは必要?
介護施設では、介護が必要な利用者が生活しています。
施設によっては認知症の方が多く入所され、対応がむずかしい場合がありますね。
利用者の安全を守るため、また介護職の負担を軽減するために、センサーマットはとても役に立つように感じます。
しかし、センサーマットにはデメリットもあります。
個人的にはそのデメリットはとても大きなものだと感じるのです。
介護職はセンサーマットに頼っていて大丈夫でしょうか?
センサーマットは本当に必要でしょうか?
次の項センサーマットがもたらす弊害についてまとめていきます。
センサーマットがもたらす弊害とは
利用者の安全と介護職の負担軽減を目的に使用されるセンサーマット。
事故予防が目的ですが、センサーマットを使用することでそれは果たされるでしょうか。
まとめると次のようになります。
- センサーマットで事故は減らない?
- センサーマットで介護職の負担は減らない?
- センサーマットは介護職の質を下げる!
- センサーマットは抑制になる?
掘り下げていきます。
センサーマットで事故は減らない?
センサーマットの目的の一つは転倒予防です。
しかし、本当にセンサーマットで転倒が予防できるでしょうか?
歩けない利用者がセンサーマットを踏むことでコールが鳴るわけですから、一見事故予防に役に立っているように思いますよね。
ただ、使い方次第では事故のリスクを高める可能性があります。
利用者が起きるのには、何らかの目的があります。
たとえば
「トイレに行きたい」
「お腹が空いたのでなにか食べたい」
「寝付けないから気分転換をしたい」
といったことです。
センサーマットにより訪問した介護職がそのあたりを理解して対応すればよいですが、そうでない場合、リスクを高める可能性があります。
なぜなら、利用者は目的を達成できないと、達成できるまで行動しようとするからです。
対応として良くない例は、センサーマットが鳴った利用者に対して「ひとりで立つのは危ないし、もう遅いんだからゆっくり寝てください」というパターンです。
利用者からすれば、目的を果たすために起きたのに、果たせないままベッドに戻されてしまうわけです。
私たちがそのような対応をされたらどうでしょうか?
不満が溜まりませんか?
なんとかして目的を果たそうとしませんか?
仮にトイレに行きたいのであれば、行けずに失禁してしまうのはとても恥ずかしいことです。
なので、なんとしてでも行こうとするはずです。
その結果、利用者が自分で移動しようする行為がエスカレートして、転倒リスクが高まってしまう可能性があります。
センサーマットで介護職の負担は減らない?
センサーマットのもうひとつの目的は、介護職の負担軽減です。
介護職の無駄な動きを減らして、必要なリスク備えたり、無駄な体力を使わないで済むようにするためです。
センサーマットを設置していれば、センサーマットが反応した時にだけ利用者の居室に行けば良いので、無駄な巡回を減らすことができるのです。
しかし、ここにひとつ問題があります。
センサーマットの反応によって対応する環境を作ると、介護職はセンサーマットに依存して行動することになります。
つまり、自ら考えて動くのではなく、センサーマットに動かされる状態になるのです。
これは、人から指示されて行動するのと同じ状態です。
人は、人から指示されてやらされ感を持った状態で仕事をすると、モチベーションが下がっていきます。
なぜなら、目的意識が持てないからです。
たとえば、自分自信が行動に目的を持って、自らの意思で行動するのと、人から無理やりやらされるとのでは、どちらが精神的なストレスを感じますか?
ほとんどの人が、人から無理やりやらされることに精神的なストレスを感じるはずです。
つまり、自主的に動くときは、人は精神的な負担を感じにくいのです。
では、どうすればやらされ感を感じずに、自ら行動できるようになるでしょう。
その方法として、たとえば利用者の行動パターンを把握し、センサーマットが反応する前に対応すれば、自分の意思で行動したと感じられるのではないでしょうか。
そして、達成感を感じモチベーションが上がるはずです。
自分で考えて、自分で行動した結果、成果を得ることができたらからです。
センサーマットに頼ってしまうと、利用者の行動パターンを把握したり、先回りして対応するという思考がなくなってしまいます。
なので、いつまで経ってもやらされ感から抜け出せず、ストレスの中で仕事をする羽目になるのです。
センサーマットは介護の質を下げる
前項にも書いたように、センサーマットに頼っていると、介護職は利用者の行動パターンを把握しようと考えることができません。
なので、介護職の能力が向上せず、サービスの質は低下することになります。
なぜなら、介護職に必要な能力は、利用者を把握し、利用者が欲していることや、状況を推測し、危険を未然に防ぐことだからです。
センサーマットを設置すると、鳴れば対応すればよい、という考えになるため、思考することを阻害してしまうのです。
たとえば携帯電話が生まれる前、多くの人は自宅の電話番号はもちろん、友人宅や会社、近所の家の電話番号を覚えていました。
しかし、携帯電話が普及して、ボタンひとつで電話がかけられるようになった現在では、ほとんどの人が5件以上の電話番号を覚えていないと思います。
それは、覚えなくても目的を果たすことができるからです。
それと同じで、センサーマットに頼っている状態では、コールがなれば対応する、という思考が身についてしまい、利用者の行動パターンや嗜好、生活サイクルを把握する意識がなくなるのです。
そして、大切な気づきを持つことができなくなり、介護職の質が下がってしまうのです。
センサーマットは抑制か?
センサーマットは抑制に当たるのか?といった議論があります。
厳密に言うと、行動を制限しているのならば抑制になります。
なぜなら、利用者が自分の意思で自由に行動する権利を奪っているからです、
身体拘束、抑制とは、本人の意思で行動ができない状態を作ることです。
センサーマットが反応した時に、利用者の行動を制限するような対応をしているならば、確実に抑制していると言えるでしょう。
たとえば、起き上がりの理由を知ろうともせずに、ベッドに寝てもらおうとするのは、利用者の行動を抑制していることになります。
しかし、センサーマットの反応によって利用者の居室を訪室し、利用者の意思を汲んで行動を支援すれば、抑制に当たらない可能性が高いですね。
つまり、どんな目的でセンサーマットを設置しているかで変わってきます。
まとめ:センサーマットを外す方法
センサーマットを外す一番良い方法は、すべてのセンサーマットを撤去し、使わない、と決めることです。
そうすれば、センサーマットがなくても利用者の安全を守る方法が見えてくるはずです。
センサーマットを日常的に使用している施設では、外すことにアレルギー反応を示します。
センサーマットを外して利用者が転倒したらどうするの?とか、巡回が増えるため、仕事の負担が大きくなるじゃないか、という反論が返ってくるのです。
しかし、センサーマットが設置されていると、ない状況でどのように対応すれば利用者の安全が守れるか、ということを考えることができなくなるのです。
なので、いつまで経ってもセンサーマットはなくならないし、下手すると増える一方になります。
まだ身体拘束への意識が今もよりも低かった時代、事故を防ぐために縛るという行為は仕方ないとされていました。
しかし、2000年に介護保険が施行され、介護現場での身体拘束が原則禁止となりました。
当時、介護現場から、身体拘束を外すと事故が大幅に増えることとなり、まともな介護ができなくなる、といった声があがりました。
しかし、結果としては、身体拘束を廃止する前後では、事故の数に顕著な差は出ていません。
特に骨折などを伴う大きな事故については、ほとんど差が見られないか、身体拘束廃止後の方が減っているとされています。
すべてのセンサーマットが悪いとは言いませんし、有効利用できれば利用者の安全、スタッフの負担軽減につながると思います。
しかし、センサーマットはあくまでも保険であって、基本は介護職が利用者の行動を予見し、先回りして利用者の目的を達成すること、および利用者の生活全般を見直して、生活サイクルを整えることが事故を防ぐために重要なことだと思います。
というわけで、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
コメント