介護職による高齢者虐待の要因について、実際に介護職として働いている人はどのような意見を持っているのでしょうか?虐待の要因となるのはどんなことでしょう。
こんな疑問を解決します
この記事の内容
事業所側から見た「介護職が虐待に及んだ要因」については、厚生労働省が全国の事業所にアンケートを実施しています。
では、実際に働く介護職は、どんな要因で虐待が起こると感じているのでしょうか?
今回は介護職員から見た虐待の要因について書いていきます。
なお、事業所に対するアンケート結果についての記事を貼っておきます。
ぜひご覧ください。
介護職側が回答した介護職による虐待の原因
介護職による虐待の発生要因として、現場からの声としては次のようなものが上がっています。
- 業務の負担が多い
- 仕事上でのストレス
- 人材不足
- 職業倫理や介護理念の薄れ
- 認知症ケアやアセスメントの活用方法などの知識不足
- 虐待に対する知識不足
- 職員間の連携不足
- 管理職のマネジメント不足
- プライベートでのストレス
- その他
掘り下げていきます。
業務の負担・仕事上でのストレス・人材不足
まずは上位3位までの要因をまとめて見ていきます。
この3つの要因はつながりがあります。
全国の事業所に対して人員状況のアンケートを行ったところ、66%の事業所が「人材が不足している」と回答しました。
多くの事業所で慢性的な人手不足になっているのです。
人手が不足すると、当然一人ひとりの業務の負担が大きくなります。
業務が忙しくなったり、残業が慢性化したりといったことが起こりやすくなりますよね。
そうなると、いっしょに働くチームメンバーの関係性にも影響を及ぼします。
イライラした空気が高まって、人間関係の悪化を招く可能性が高くなるのです。
忙しい最中、連携の際につい言葉がきつくなったり、態度が荒くなってしまったり、ということが増えてしまいます。
その結果、仕事上のストレスが強くなり、虐待に発展してしまうのです。
職業倫理や介護理念の薄れ・認知症ケアやアセスメントの活用方法などの知識不足・虐待に対する知識不足
次は、介護職員の職業倫理、理念に対する意識の低下や、介護に対する知識不足が要因との結果が出ています。
介護福祉士の倫理綱領に定められている内容であったり、事業所がかかげる理念は、介護職として働くにあたって非常に重要なものです。
倫理綱領や施設理念は、介護職員がなにを大切にしなければならないのか、事業所がどこをめざしているのかを明らかにしたものだからです。
ですから、これが薄れてしまうと、介護職として求められる姿に進むことができず、逆にあるまじき行為に走ってしまうことがおこりえます。
職業倫理や施設理念は、ともすれば絵に描いた餅になりがちです。
しかし、本来はその仕事の目的やあるべき姿をあらわしたものですので、非常に重要なのです。
ですから、普段からしっかりとおさえておきましょう。
倫理や理念の土台につみあげていく知識や技術も非常に重要ですね。
アセスメントを活用して利用者のことを深く知り、認知症の利用者に対して適切な対応ができないと、虐待に発展する可能性が高くなります。
また、虐待の知識が不足していると、なにが虐待にあたるのかを理解しないまま、知らず知らずのうちに虐待をしてしまっているといったことがおこりえます。
ですから、正しい知識、技術を把握しておかなければならないのです。
職員間の連携不足
職員間の連携不足も、虐待の要因としてあがっています。
連携が不足するということは、必要な情報が共有できなかったり、役割を分担することができなくなります。
介護はチームで提供するものですから、ひとりが情報を持っているだけでは不十分です。
その情報をチームで共有し、連携して介護をすることで、きちんとしたサービスが提供できるようになるのです。
それができないと、認知症利用者が穏やかに過ごせなかったり、業務がスムーズに進まなかったりして、チームメンバーのストレスが増えていきます。
その結果、する必要のない身体拘束をする、というようなことが起こりえるのです。
また、連携が不足するということは、人間関係が悪い可能性が高いです。
職員間の関係性が悪いと、職場の雰囲気は非常に悪いものになります。
それが全体のストレスになって、攻撃的な環境が生まれます。
そして、利用者に矛先が向いてしまうのです。
管理職のマネジメント不足
職員の連携不足は、管理職のマネジメントの質が悪い結果として起こりえます。
管理職の役割として、利用者だけでなく職員の状態把握は大切です。
職員の心身両面から健康状態を把握し、問題や異変があるようなら、面談などを行って回復できるように予防していかなければなりません。
それがうまくできないと、虐待につながる恐れがあります。
現場の状況についても、常に改善点がないかを考えておかなければなりません。
効率の悪い状況や、介護職にとって過度な負担が発生していないかなどを把握し、改善する必要があるのです。
また、きちんとした目標を示せない管理職だと、スタッフはどこを目指せばいいのか、なにが正しいことなのかといったことがわからなくなります。
チームに目標がないと、仕事へのやりがいを感じられなくなってしまい、持てあましたパワーを陰口やうわさ話しに費やすようになってしまいます。
その結果、人間関係の悪化を招き、ストレスによって利用者への虐待の原因になるのです。
プライベートでのストレス
人間は感情の動物です。
感情が行動に大きく影響するのです。
ストレスを感じると、感情のコントロールが難しくなります。
ストレスの原因が仕事上であろうが、プライベートであろうが関係ありません。
よく「仕事にプライベートを持ちこむな」と言いますが、人間である以上完璧に持ち込まないようにするのは無理な話しです。
管理者やチームのメンバーは、普段とのちがいに気づき、お互いにケアをする必要があります。
話しを聞くだけでも、ストレスを抱えている人の気持ちはずいぶん軽くなります。
まとめ
介護職側から見た、虐待の発生要因についてまとめました。
順位や割合は違いますが、事業所側から見た虐待の要因とほとんど同じ結果になりました。
この二つのアンケートの結果から、虐待を予防するための方法が見えてきます。
もっとも大切なのは、介護に必要な知識、技術をきちんと身に着けておくことですね。
それによって7割ちかくの虐待は回避できたと考えられるということです。
つまり、虐待を防止するために必要なことは、むずかしいことでも特別なことでもないということですね。
日本のみなさまが安心して老後を迎えられるよう、介護に携わる者としては虐待ゼロの実現に向けて努めていきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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