介護の専門性に悩む人「介護の専門性ってなんだろう?看護師やセラピストとくらべて、介護は専門性の低い仕事って見られているよね。介護に専門性はないっていう人もいる。実際に家族でもしているからって。国家資格もある介護職なのに、専門性はないのかな」
こんな疑問を解決します
この記事の内容
こんにちは、せいじです。
介護の仕事を18年間、初任者研修や実務者研修の講師を5年間しています。
さて、介護の専門性とはなんでしょうか?
介護は専門性が低い、もしくは専門性がない、と言われてしまうのではどうしてでしょうか。
今回は、そのあたりについて書いていきたいと思います。
結論として、介護には専門性があります。
しかし、介護職が十分にその専門性を発揮しているかどうかは疑問ですね。
介護の専門性とは何か
介護の専門性とは何か、とてもむずかしい質問に聞こえますね。
でも、介護の専門性には明確な答えがあります。
まずは専門性の言葉の意味から考えていきます。
専門性の言葉の意味
専門性とは、特定の分野に深く関わるにあたって、高度な知識や経験を要求されること、またはその度合い、です。
資格が必要な仕事、と言い換えることができます。
つまり、専門性のある仕事とは、資格を取得することで特別な知識を身に付け、その知識をもってする仕事と言えます。
たとえば、スーパーやコンビニの仕事は、専門性が高い仕事ではありません。
資格はいらないし、経験がそれほどなくてもほとんどの人ができるようになります。
でも、医者は専門性がすこぶる高い仕事ですよね。
頭が良くて、医大を出て、さらに勉強をしないと医者にはなれません。
そして経験を積み重ねて、それが生きる仕事です。
弁護士にしてもそうですね。
専門性の度合いはこのようにはかることができると言えるでしょう。
まとめると次のようになります。
- その仕事をするために必要な資格の有無
- 必要な資格を取得するためのハードルの高さ
- 習熟した仕事ができるようになる期間
この3つの要素によって専門性の高さ、低さをが決まります。
では、介護関連の仕事に置き換えると、どのような差があるでしょう。
専門性の度合い
- 高:医師、看護師、セラピスト
- 中:相談員、ケアマネ、栄養士
- 低:事務員
仕事の価値ではなく、あくまでも専門性の話しです。
施設の事務員は、非常に重要だと個人的には考えております。
それはさておき、では介護職はどこに位置されるでしょう。
「介護職」とひとくくりにすると、「低」になるかもしれません。
「介護福祉士」となると「中」でしょうか。
繰り返しになりますが、ここで表したいのは仕事の価値ではなく、基準に当てはめた場合の専門性の高さです。
介護職は日常生活を支援する専門職ではない
ところで、介護職の専門性を考える場合、介護とはなにをすることなのか、が重要になります。
介護職を日常生活のお世話をする仕事、と分類した途端に、専門性は失われてしまいます。
なぜなら家族でもしているし、家政婦という仕事と変わらなくなるからです。
しかし、介護職は日常生活のお世話をする仕事ではありません。
介護とは自立支援をする仕事です。
つまり、介護の専門性は、自立支援をすることにある、と言えるわけですね。
介護過程の展開をしなければ介護に専門性は生まれない
では、自立支援をする、という専門性を担保するものはなんでしょう?
つまり専門性の根拠となるものです。
それは「介護過程の展開」です。
介護過程の展開の基本的な流れ
- アセスメント
- 計画作成
- 実施
- 評価(モニタリング)
たとえば、後輩に「なぜAさんにこのような食事介助をするのですか?」と訪ねられたとします。
その際に、「私も先輩からこうするように教わったの」とか「昔からこうしてるのよ、だからあなたもこのようにしてくれたらいいから」という回答では、根拠を持って介助をしているとは言えません。
「Aさんは右麻痺があって、利き手ではない左手を使って食べてるの。だから食べこぼしがどうしても多くなってしまうのでエプロンをしているの。それにお皿をうまく移動できないことがあるので、食べやすい位置に移動する支援をしているのよ。こうすれば自分でうまく食べることができるから」
という、自立に向けた根拠をきちんと説明する必要があります。
これができているかどうかで、専門性のある介護をしているかどうかが分かれることになります。
介護過程の展開については、介護過程とは?意義や目的は?【介護の専門性の根拠です】を見ていただけると嬉しいです。
なぜ介護職は専門性が低いと言われるのか?
介護の専門性についてはここまでで書きました。
しかし、介護は専門性が低い、もしくは専門性のない仕事という声が世の中にはありますね。
どうしてそのように言われるのかを、改めてまとめておきます。
結論から言うと、ここまでで説明してきた、自立支援に向けた根拠のある介護ができていないから、というのも大きく影響しています。
また、介護をただのお世話と混同して考えることによって、誰にでも出来ること、と捉えられがちです。
それらを含めてまとめると次のようになります。
- 家で家族が介護をしてきた歴史による
- 資格がなくてもできる仕事だから
- 現在の介護職の専門的な力が足りないから
掘り下げていきます。
家で家族が介護をしてきた歴史による
介護は元々シャドーワークの一つでした。
シャドーワークとは、家の中で行う次のようなことを指します。
- 炊事、洗濯、掃除などの家事
- 子育て
- 介護
三世代同居が多かった以前の日本では、これらは主にお嫁さんの役割とされていました。
現在においても、家で生活している要介護高齢者については、家族が介護を担っています。
介護の専門的な資格を持たず、経験値の浅い家族でも出来ること、ということで、介護の専門性は低く見られがちであると言えます。
資格がなくてもできる仕事だから
また、介護は資格がなくてもすることができる職業です。
介護の資格
- 初任者研修
- 実務者研修
- 介護福祉士
- 認定介護福祉士
これらを取得もしくは修了していなくても、仕事として介護職をすることができます。
なので、高度な、もしくはある一定以上の知識や経験を要する仕事という専門職に該当しないと思われてしまうのです。
現在の介護職の専門的な力が足りないから
最後は、介護職自身が専門性を発揮した介護を提供できていないから、ということが言えます。
人が足りない、現場が忙しい、という理由によって、流れ作業のような介護になってしまい、利用者ひとりひとりをしっかり見ることができていないのです。
介護過程の展開によってしっかりと課題を抽出し、それを解決するためにどのような支援をしていくのか、そして普段どのように関わっていくのかをきちんと根拠を持ってやれば、今よりももっと介護の手間が省けるはずです。
しかし、それをしないで忙しさに追われてしまっては、いつまでたっても専門性の高い介護ができず、状況が改善しないのです。
これはやった人でしかわからないところかもしれません。
そうでない人にとっては、ただの理想論、机上の空論であると片付けられてしまう可能性が高いでしょう。
騙されたと思って、敢えて介護過程の展開に着手してもらいたいなと思いますね。
まとめ
介護の専門性とは何か?ということについて書いてみました。
人間の日常生活を支援する介護職は、ただのお世話に見えてしまう部分があるのは事実です。
しかし、介護過程の展開による個別援助計画の作成、その計画書に基づいた根拠のある介護をおこなうことによって 、介護に専門性がもたらされます。
現場が忙しい中ではあるとおもいますが、ぜひその視点を持っていただきたいです。
そうすることで、介護職の精神的、肉体的負担は大きく改善され、やりがいにもつながるはずです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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