
介護施設の事故対策委員会に選ばれたんだけれど、担当して初めて、事故について漠然としか理解していないことに気づいた。今後は施設内研修もしないといけないから、まずは事故の定義や種類、その対策について知りたい。
こんな悩みを解決します。
この記事の内容
介護現場で対策に力をいれなければならないこととして「介護事故の防止」があります。
介護事故の多い、少ないは、施設や事業所の信頼に関わるからです。
今回の記事は、介護事故の定義と種類、そして対策について書いていきます。
ちなみに私は高齢者福祉で介護職、ケアマネ、施設長として17年間勤めました。
現在はセミナー講師として活動し、介護事故の防止に関する研修を5年ほどしています。
介護の事故の定義と種類
介護事故の定義や種類について見ていきます。
- 介護事故の定義
- 事業所における介護事故ランキング
- 介護事故①転倒
- 介護事故②転落
- 介護事故③誤薬
- 介護事故④介護ミス
- 介護事故⑤行方不明
- 介護事故⑥誤嚥・誤飲
- 介護事故⑦感染症
掘り下げていきます。
介護事故の定義
まずは介護事故の定義を考ていきます。
定義を明確にしておくことで、事業所全体で事故に対する理解を統一することができます。
介護サービスを提供する施設においては、厚生労働省が出している「特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン」の定義がわかりやすいと思います。
介護事故の定義
施設内および職員が同行した外出時において、利用者の生命・身体等に実害があった、または実害がある可能性があって観察を要した事例(施設側の責任の有無、過誤か否かは問わない)
事業所における介護事故ランキング
次に介護事故の種類について書いていきます。
介護施設や事業所ではどのような事故が起こっているのでしょう。
大阪市のデータとしては下の図のようになっています。

引用:令和元年度大阪市集団指導資料より
介護事故の数に違いはあるでしょうが、市によって事故の種類が大きく変わるということはないため、大阪市のデータを使用して考えていきます。
この中からメジャーな事故を上位から順番に紹介していきます。
介護事故①転倒
介護の事故で、もっとも多いのが転倒事故です。
人間の身体は、地面に接している部分が多ければ多いほど、そして重心が低ければ低いほど安定します。
立って歩いている状態は、片方の足1点でしか地面に接しておらず、人間の行為の中で一番不安定な状態なのです。
転倒事故の具体例は次の通りです。
転倒事故の具体例
- 歩行中の転倒
- 立ち上がり時の転倒
- 身体能力と認知機能のずれによる転倒
ちなみに、転倒事故が発生する場所はどこだと思いますか?
圧倒的に多いのが居室です。
フロアだと見守りができ、なにかあったら介助に動けますが、居室内は死角になりますし、プライバシーを守らないといけない、という前提があるので、どうしても介護職の目が届きにくくなります。
転倒事故の原因
- 見守りが不十分
- 利用者の行動予測ができていない(危険予知)
- 環境整備ができていない
転倒事故を防ぐためには、利用者の行動予測ができるかが重要です。
普段から利用者の生活習慣を把握して、必要なものが安全に手に入るように準備しているか、ということです。
たとえば、毎晩8時にテレビを見る人に対して、ベッドにいながら操作できる場所にリモコンがあるかを確認しておく、といったことですね。
介護事故②転落
集計で転倒事故と同じくくりに入るのが転落事故(ずり落ち含む)です。
ただ、厳密にいうと違うので、この記事では分けて記載します。
転落事故の具体例
- ベッドからの転落
- 車いすや椅子からの転落
こちらも居室が多いですね。
ベッドからの転落は、移動するためにベッドから降りようとして起こるケースが多いです。
転落事故の原因
- 利用者の行動予測ができていない(危険予知)
- 利用者の身体能力の把握不足
- 座位姿勢を保つための適切な環境が作れていない
行動予測については転倒事故と同じです。
車いすや椅子からのずり落ちは、利用者に姿勢を保持する体力がなかったり、座っているポジションや、姿勢が悪かったりすることで起こります。
身体がずれないようにクッションを当てたり、地面に足がつくように足台を置くなどの環境整備が必要ですね。
介護事故③誤薬
誤薬とは次のようなケースが該当します。
誤薬の具体例
- 他人の薬を誤って服用した
- 昼食時に夕食時の薬を服用した
原因は次の通りです。
誤薬の原因
- 職員の配り間違い
- 同席の他の利用者の薬を誤って飲んだ
職員の配り間違いのミスによって起こるケースがほとんどですね。
誤薬は、薬の種類によっては重篤な副作用が起こる場合があるので、配る際には二重、三重のチェックが必要です。
そのチェックをマニュアル化し実施している施設がほとんどだと思いますが、それでも0にはなりません。
たとえば、他の利用者が体調を崩しているとか、職員が急に休んでいつもより少なくなったとかなどのイレギュラーがあって、マニュアル通りの配薬手順を踏まなかった、であったり、業務自体がマンネリ化して、チェックを注意深くできていなかった、などが原因として考えられます。
介護事故④介護ミス
介護ミスとは、介護職による人為的なミスを指します。
介護ミスの具体例
- 介助中に利用者を転倒させてしまう
- 爪などで利用者の身体を傷つけてしまう
- おむつ交換時に足を広げ過ぎて骨折させてしまう
具体例にあるように、介護職がかかわっている中で、あきらかに介護職のミスによって起こった事故ということですね。
3つ目の骨折はびっくりするような内容ですが、珍しくない事故です。
要介護高齢者、その中でも女性は骨粗しょう症の方も多く、骨がもろくなっています。
ただ触っただけで折れることはありませんが、少し雑な介護になると、骨折が起こります。
「大腿骨」という太ももの太い骨が折れていたケースもありました。
介護ミスの原因
- 知識、技術不足
- 利用者の情報把握不足
- 雑な介護
- 職員の体調管理不足
介護ミスの原因としては、職員自身の知識、技術不足があります。
また、利用者を十分に把握できていなかったがために起こるケースもありますね。
長年介護をしてきて、介護が雑になってしまった結果、骨折などの事故が起こることもあります。
体調管理不足については、注意力が散漫になったり、とっさの判断ができなかったり、という部分で影響してきます。
介護事故⑤行方不明
介護の事故で意外と多いのが行方不明です。
行方不明の具体例
- 施設からいなくなる
施設に入所中の方(ショート含む)や、デイサービス利用中の方が、職員の気づかない間に施設を出て行方が分からなくなってしまうケースですね。
利用者がひとりで施設外に出ると、交通事故に合う危険があります。
また、施設は基本バリアフリーになっていて、床が完全にフラットになっていますが、外の道路は凹凸がありますし、アスファルトに穴があいていたり、細かな石が落ちていたりします。
健康で体力のある方だとあまり気になりませんが、高齢で下肢筋力が低下している方にとっては、屋外を歩くことはかなり体力のいることなのです。
ですから、転倒の危険が極めて高くなります。
他にも、溝や用水路、川に転落するリスクもあります。
真夏だと熱中症、真冬だと凍死することも考えられます。
専門用語で離設と言いますが、離設は命の危険に直結する事故だと言えます。
行方不明事故の原因
- 利用者の行動予測ができていない
- 利用者の外に出るという行動に対する予防策ができていない
ここでも、利用者の行動予測が重要です。
利用者のADL、認知症の有無、性格や普段の様子などから、離設リスクを予測しておかなければなりません。
また、利用者が外に出てしまった場合、すぐに感知できる設備が必要です。
多くの施設では、正面玄関には対応がされています。
ボタンを押さないと自動ドアが作動しない、であったり、通る際にチャイムが鳴る、というような設備を設けているところが多いですね。
しかし、次のような場所はどうでしょうか。
見落としやすい離設の場所
- ゴミを出す出入り口
- 施設裏口などの勝手口
- 職員通用口
- 人が出られるぐらいの大きな窓
これらの場所は、利用者が普段あまり行かない場所として、対応が漏れている場合があります。
しかし、離設は想定していない場所で起こることが多いです。
つまり、出入りがわかりやすい正面玄関ではなく、別のところから出て行かれ、気付けなかったということですね。
たとえば、職員が勝手口から外に出たあとに施錠を忘れ、その扉から利用者が外に出られた、といったケースが実際にありました。
また、窓から出て行方不明になり、数日後に遺体で発見された事故が実際にあり、訴訟で事業所側の責任とする判決も出ています。
対策が不十分な場所がないか改めてチェックし、対応を実施してください。
介護事故⑥誤嚥・誤飲
食事中の事故としてあるのが誤嚥・誤飲の事故です。
誤嚥・誤飲の具体例
- 誤嚥・・・・食べ物が気道に入ってしまうこと
- 誤飲・・・・食べ物以外のもの(本来口に入れないもの)を飲み込むこと
食事中の誤嚥で食べ物が気道に入ると、喉をつめて窒息する危険があります。
また、食べ物が気管を通って肺に入ってしまうことによって、細菌が発生して誤嚥性肺炎を発症することがあります。
誤嚥性も含む肺炎は、高齢者の死亡原因として、がん、心臓疾患に次ぐ3番目の多さとなっています。
誤飲については、認知症を患う利用者が、食べ物以外のものを飲み込んでしまうケースですね。
飾ってあった花やレクリエーションで使ったビー玉、食事トレーに乗せていたネームプレート等を口に入れて飲み込んでしまう場合があります。
誤嚥・誤飲の原因
- 不適切な食事介助
- 見守り不足
- 環境の整備不足
誤嚥の原因としては、食事介助の際に、利用者の食事姿勢を正しくしないで介助したり、利用者のペースに合わない食事介助が考えられます。
利用者の嚥下状況が大きくかかわる事故でもあるので、普段の食事の様子をしっかりと確認し、飲み込みの力に変化がないか把握する必要があります。
また、余談になりますが、誤嚥性肺炎は、口腔内が不潔な場合に発生するリスクが高まります。
適切な口腔ケアを実施し、口腔内を清潔に保つ必要があります。
誤飲の原因については、口に入れてしまうようなものを排除、管理する環境づくりが不十分であると言えます。
介護事故⑦感染症
感染症の事故とは、施設で感染症が蔓延する状態を指します。
感染症の具体例
- インフルエンザの蔓延
- ノロウィルスの蔓延
- 風邪の蔓延
- 疥癬の蔓延
施設の感染症蔓延で多いのは、インフルエンザやノロウィルスですね。
この2つは感染しやすいのと、蔓延しやすいので非常に厄介です。
ひとりの利用者、またはスタッフが発症すると、それ以上の感染拡大を防止するために、隔離などの対応をしなければなりません。
その間は発症した利用者および職員、発症した人と接触した人の生活に制限がかかります。
収束するまで、ストレスのかかる生活となります。
感染症事故の原因
- 職員の危機意識のなさ
- 施設のマニュアルが不十分
施設の入所者が外出する機会はそれほど多くありません。
ですから、感染症を持ち込むのは次のような人である場合が多いです。
- 働いている職員
- ショートステイや新規の入所者
- 面会者
入所している要介護高齢者は、免疫力が低下しているため、感染症にかかりやすくなっています。
働いている職員には、特に流行期、自身の体調管理や、体調に異変があった場合の報告・連絡・相談が求められます。
また、人混みに極力行かないようにしたり、マスクを着用するなどして、感染しないような配慮が必要です。
万が一施設で感染者が出た場合は、介護職が媒介となって広めてしまわないよう、感染症に対する危機意識を持ち、マニュアルを守って業務を行うことが重要です。
まとめ
介護施設における事故の定義、種類、その原因について書きました。
「介護に事故はつきもの」と言われます。
利用者のできる限りの自由を尊重したうえで、リスクを取り除いていかなければならないので、避けようがない事故もあるのは事実です。
しかし、対応次第では十分避けられたはずの事故が、避けようのない事故としてとらえられると、いつまで経っても事故は減りません。
まずは事故の種類と原因を把握して、防止方法を検討するのに役立ててください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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介護事故を無くしていくうえで、もっとも重要となる事故の原因について、下の記事で書いてます。
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