介護職による高齢者虐待から考える施設を取り巻く環境

個人能力向上

2006年に高齢者虐待防止法ができて、13年が経ちました。

この間、介護職による高齢者虐待は、増え続けています。

そして、今後もそれは続いていく可能性が高いと考えられます。

この記事の内容

  • 介護職による高齢者虐待が増える理由
  • 2つのリスクにより虐待は増えていく

結論からいうと、高齢者虐待は今後も増えていきます。

それは、75歳以上の高齢者がこんごさらに増えていくことと、介護職の人材不足による、サービスの質の低下が原因です。

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介護職による高齢者虐待が増える理由

介護職による高齢者虐待が今後も増えてく理由として、次の2点が考えられます。

 

  • 利用者の重度化
  • 職員が定着しないことによるサービスの質の低下

掘り下げていきます。

要介護高齢者の重度化

2025年問題をご存知でしょうか?

大阪万博が開催されることになりましたが、2025年という年は介護業界にとっても大きな境になる年かもしれません。

というのも、団塊の世代と呼ばれる方が、全員75歳以上になる年だからです。

団塊の世代とは、1947年~49年の間に生まれた方々をさします。

この3年間は「第一次ベビーブーム」と呼ばれ、たくさんの子供が誕生しました。

なんと1年間で260万人以上のあかちゃんが生まれたのです。

平成30年度に生まれたあかちゃんは約92万人ですから、比較すると3倍の数の新しい命が3年間つづけて生まれたことになります。

つまり、75歳以上の方が2025年までにいっきに増加することになるわけです。

人間は高齢になるにともなって、病気のリスクが高まっていきます。

当然それに比例して、医療が必要になる方も増えるということです。

病院のベッドには限りがありますから、治療が終わった人からどんどん退院させていかないと、必要なかたに提供できなくなります。

これまでなら治療も含めて、ある程度まで回復した状態で在宅復帰や施設に移っていた患者が、回復しきらないまま介護サービスに移行することになります。

介護にかかる手間が増えていくので、介護職にとって負担が大きくなっていきます。

その負担はストレスとなり、虐待のリスクに発展する可能性が高まっていくと考えられます。

介護人材の不足や安定しないことでサービスの質が低下する

利用者が重度化していくいっぽうで、介護サービスについては質が低下していく可能性があります。

現状でも人材不足が叫ばれていますが、国の試算によると2025年には介護職が約40万人不足すると予想されています。

介護職の増減は、経済に影響を受ける傾向があります。

景気がよければ一般企業の求人が増えるので、給料の高い仕事に人は流れていきます。

しかし景気が悪くなると、一般求人の門戸がせまくなるのと、給料が低くても安定していて正規雇用で就職しやすい介護職のなり手が増えるのです。

東京オリンピックや大阪万博の開催によって、日本の経済はしばらく良い状態がつづく可能性が高いので、少なくとも2025年を過ぎるまでは、介護の仕事に人が入ってきにくい環境であることが予想されます。

要介護高齢者が増えるということは、その受け皿である施設も増えていくことになり、より多くの介護職が必要になります。

その結果、どうしても介護職の質は低下してしまうのです。

では、どうして介護職の質が落ちると虐待が増えることになるのでしょうか。

それは、虐待の発生要因として、もっとも多いとされるのが「教育、知識、技術の不足」だからです。

虐待の対象になっている利用者の8割は、認知症を患っています。

認知症とは、状況を正しく認知できない病気ですから、利用者は現実で起こっていることがらとはちがう言動をされることになります。

そこに適切に対応できる知識、技術がないと、利用者の言動はますます悪化することになり、介護職のストレスは増加していきます。

その結果、虐待に発展してしまうリスクが高くなるのです。

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2つのリスクにより虐待は増えていく

人材の確保については、外国人技能実習生によって国はまかなおうとしています。

しかし、介護のは利用者の生活を支援する仕事であるため、日本とは異なる文化で生活してきた外国人が、日本人の文化を完全に理解して支援することは困難です。

それに言葉を使ったコミュニケーション力も、日本人と比較すると不十分になります。

認知症の利用者に対するかかわりについては、特にむずかしいことはまちがいありません。

つまり、利用者の重度化と、介護人材の不足によるダブルのリスク要因によって、虐待が増える可能性が高まるということになります。

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まとめ

介護職による高齢者虐待の発生リスクが、今後も高まっていく可能性が高いというテーマで書いてみました。

サービスを提供する事業所や、そこで働く介護職にとっては、今よりもさらに困難な時代を迎えることはまちがいないでしょう。

この問題を解決していくためには、いかに早く職員の知識、技術を向上させることができる教育体制をつくることができるか、ということが重要になってきます。

なぜなら、虐待が起こるいちばんの要因が、知識、技術の不足によるものだからです。

利用者、介護職、事業所を守ると同時に、安心して年を取っていける社会にするためには、避けて通れないところになるのではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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