介護の現場では、事故を防ぐために「ヒヤリハット報告書」を使っているよね。ヒヤリハットを出すことで、事故を防ぐことができる、と言われているけれど、その元となっているハインリッヒの法則について知りたい。
こんな疑問を解決します。
この記事の内容
施設で事故を防止していくためには、チーム全体で防止に向けて対策を進めていく必要があります。
そのためには、事故を防止するために使用しているツールや取り組みに対して、スタッフが理解しなければなりません。
ヒヤリハットの活用についても、ただ書かされているだけ、ただ提出させているだけ、といったところが多いのではないでしょうか。
ヒヤリハットの根拠となるハインリッヒの法則を知り、その理解を共有することで、チーム全体でヒヤリハットを活用できる土壌を作っていきましょう。
というわけで、今回の記事は、ハインリッヒの法則につて書いていきます。
ちなみに、私は現在に至るまで6年ほど、介護事故防止の講座を、自分の所属していた法人や外部法人に対して行っています。
ハインリッヒの法則とは
ハインリッヒの法則とは、ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが、1929年の自身の論文で発表した法則です。
彼は当時アメリカの損害保険会社に勤めており、仕事で労働災害を扱う中で、ハインリッヒの法則を導き出しました。
ハインリッヒはこの法則によって「災害防止のグランドファーザー」と呼ばれるようになりました。
ハインリッヒの法則の基本的な考え方
ハインリッヒの法則とは、5,000件の労働災害を分析する中で導き出された法則です。
事故を分析したところ、1つの重症の怪我を伴った事故が起きるまでに、類似した29の軽傷を伴った事故があり、同じく300件の無傷だった事故が起こっていることが判明しました。
まとめると次のようになります。
- 1つの重大な事故の背景に、29の軽微な事故がある
- 29の軽微な事故の背景に、300のヒヤリハットがある
この法則の結論としては、ヒヤリハットの段階で防止策を講じることで、人や機械がかかわって起こっている事故の98%は防ぐことができる、としています。
また、機械などの故障や誤作動といった「機械的物理的不安全状態」よりも、人のミスなどによる「人間の不安全行動」の方が9倍も多いとされています。
ハインリッヒの法則は介護現場にもあてはまる
ハインリッヒの法則は、いろいろな業界に当てはめることができるとされ、介護現場にも用いられるようになりました。
介護現場においては、次のような形になっています。
- 1件の骨折などを伴う大きな事故の背景に
- 29件のかすり傷などの軽微な事故があり
- 300件の事故には至らなかったヒヤリハットがある
介護現場でも重大な事故が起こるまでの間に、29件の軽微な事故があり、300件のヒヤリハットが起こっていると考えられます。
重大な事故に至るまでに、軽微な事故の事故報告書やヒヤリハット報告書を分析し、なぜ事故が起こったのか、その原因はなにか?を導き出す必要があります。
その原因に対策を講じることで、1件の重大な事故を防ぐことができるのです。
繰り返しになりますが、ハインリッヒの主張としては、これで98%の事故を防ぐことができる、と言っています。
介護は他の業界と比較して、人がかかわる要素が多くある仕事です。
ハインリッヒの法則では、物理的なものより人がかかわるミスの方が9倍多いとされているので、介護の仕事は事故が多く発生しやすい、と考えられます。
つまり、ヒヤリハット報告書の活用が欠かせない業界と言えるのではないでしょうか。
重大な事故が多く発生している事業所では、事故報告書やヒヤリハット報告書が正しく活用されていないと言えます。
介護現場でハインリッヒの法則を活用する
ハインリッヒの法則に基づいたヒヤリハットの活用は、事故を防いでいくためにとても重要です。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉があるように、物事が起きた直後は「もう二度とこんな事故を起こしてはいけない」と思いますが、時間が経過すると風化してしまいがちです。
それは「ヒヤリ・ハット」したことも同様です。
「危なかったぁ~、なにもなくて良かった!」で終わらせるのではなく、その原因がなんだったのかを突き止め、対策を講じておくことで、次に起こるかもしれない大きな事故を防ぐことになるのです。
つい目の前のことで精一杯になってしまいますが、一歩、二歩先に手を打つことが、仕事の質を高め、また仕事を楽にする秘訣でもあります。
まとめ
ハインリッヒの法則について書きました。
この法則に則れば、ヒヤリハット報告書を正しく運用することによって、多くの事故を未然に防ぐことができる、ということです。
介護の事故のほとんどは、直接利用者の身体や精神にダメージを与えてしまいます。
また、かかわった介護職員にも、精神的なダメージが残る場合があります。
実際に、介護事故を気に病んで、退職してしまった人もいます。
利用者の安全を守るのは大前提ですが、介護職自身もつらい思いをしなくて済むよう、事故を未然に防止していかなければなりません。
ぜひハインリッヒの法則を事業所に浸透させ、ヒヤリハットを活用してください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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