時々、利用者の身体に皮下出血や傷がある。入浴の時に見つかるんだけれど、すでに黄色くなっていたり、傷も乾いていて、時間が経っているようなんだよね。これって事故があっても報告されていないんじゃないかな。もしスタッフが事故を隠しているなら、隠さないような施設にする方法を考えないといけない。
こんな悩みを解決します
こんにちは、ハッピーアクトの講師、せいじです。
介護施設で約17年間、介護職、ケアマネ、施設長などの管理職をしてきました。
現在は介護の知識や技術、職員のモチベーションアップやチームワーク向上のセミナー講師をしています。
この記事の内容
介護施設にとって、利用者の生活を守りながら事故を防いでいくことはひとつの使命で、サービスの質の良し悪しをはかる物差しにもなります。
少なければ少ない方がいいですが、一方で介護において事故はつきものでもあります。
そこで重要なのは、事故に早期に気づき、適切に事後対応することです。
そして、一番あってはいけないのが、事故を隠蔽することですね。
今回の記事は、施設や介護職が事故を隠してしまう理由について書いていきます。
また、事故が隠蔽されないような施設づくりについても書いていきます。
ちなみに、不正はいずれ明るみになります。
一時的にはうまく隠せたとしても、内部告発やその他でばれる日が来ます。
奇跡的にばれなかったとしても、隠した本人は一生十字架を背負って生きていかなければなりません。
そのことをしっかりと考え、必ず正しい対応をするようにしましょう。
介護の事故については、こちらの記事も参考にしてください。
介護施設が事故を隠蔽するとどうなるか
万が一、介護事故を施設がきちんと公にせず、もしくは把握できずに、隠蔽するとどのようなことになるのかを考えていきたいと思います。
施設自体が隠蔽する場合と、介護職自身が施設に対して隠す場合、2パターン考えられます。
まとめると次のようになります。
- 施設の信頼がなくなる
- 訴訟の原因になる
- 介護職の士気が下がる
- 施設の中で虐待が蔓延する
掘り下げていきます。
施設の信頼がなくなる
介護事故を施設が隠蔽していたことが世間に明るみになると、施設の社会的信用はまったくなくなると言っても過言ではありません。
それどころか、まっとうに運営している施設に対しても社会から疑惑の目が向けられてしまうことになります。
利用者やその家族は、世間のニュースに敏感に反応します。
「もしかしたら自分の親を預けている施設でもあり得るのでは?」と不安になるのです。
ですから、普段ならなんでもないようなことも、クレームにつながることがあります。
つまり、介護業界全体の信用を落とすことになる、ということですね。
訴訟の原因になる可能性
事故を隠蔽していたことがばれると、事故の対象になっていた利用者、家族から訴えられる可能性があります。
なぜなら、その時点で信頼関係が0になるからです。
家族と信頼関係ができていて、適切に報告、対応すれば、事故で訴訟に至るケースというのはほぼありません。
介護の施設がどのようなところかをしっかり理解いただいたうえで、できる限り安全を守り、利用者の生活を支援していれば、事故があっても「しかたがなかった」ということをわかっていただけます。
しかし、仮にそれほど大きな事故ではなくても、きちんと報告しなかったり、報告する時間が遅かったりといった不信感を与えるような対応をしてしまうと、訴訟に至ることがあります。
介護職の士気が下がる
もし施設が大きな事故を隠蔽するようなことがあると、介護職の士気は確実に下がります。
なぜなら、介護の専門職として、事故を隠すということはあってはならないことだらかです。
ですから、施設に対する信用を失ったり、介護の仕事に対する誇りを失ってしまうのです。
特に介護に対して思いを持っている、意識の高い職員の士気は確実に下がります。
施設を退職したり、最悪のケースとしては介護の仕事を辞めてしまうことも考えられます。
施設が隠蔽した事故や虐待を、介護職が行政に密告することも良くあります。
施設は、介護職に密告させてしまうようなことをしてはいけませんね。
施設の中で虐待が蔓延する可能性がある
施設が介護の事故を隠蔽してしまうと、介護職の士気が下がるだけでなく、不適切な介護が蔓延してしまう可能性があります。
なぜなら、仮に不適切なケアをしても「施設は公にはしないだろう」と考えるからです。
ですから、介護職が利用者に対して、介護放棄(ネグレクト)や、暴力といった、虐待に走りやすくなってしまうのです。
部下は上司の鏡、と言います。
施設の上層部がしっかりとした運営を行わないと、介護現場が良くなることはありません。
介護職が事故について嘘をついたり隠蔽する理由
事故の隠蔽において、介護職が報告しなかったり、嘘をついて事故を隠してしまうケースがあります。
なぜそのようなことが起こるのかを考えます。
まとめると次のようになります。
- 上司や周囲から責められるから
- 施設や上司からの評価が下がるから
- 報告書を書くのがめんどうだから
掘り下げていきます。
上司や周囲から責められるから
介護職が事故を隠すようになる理由のひとつに、事故の責任を求められたり、事故を起こした原因を追究されるからです。
事故が起こった原因を追究するのは大切なことですが、個人のミスやその責任を追及する形になると、それが嫌で事故を隠すようになる可能性があります。
起こった事故はどうしようもありません。
個人を責めたところで事故がなかったことになるわけではないのです。
それに、責められると、人はどうしても自分を守ろうとします。
ですから、追及してもきちんとした原因にたどり着かなくなる可能性が高くなります。
事故については個人の責任に原因を求めたり、責めたりするのではなく、あくまで「原因がなんだったのか」だけにフォーカスを当てなければなりません。
これは施設の中で、普段からの共通見解としておく必要がありますね。
そうすることで、事故がきちんと報告されるようになります。
施設や上司からの評価が下がるから
事故を起こすと施設や上司からの評価が下がってしまう、と考えるような環境だと、報告をためらうかもしれません。
人間だれしも周りからの評価は気になるものです。
事故を起こすと評価が下がる、と思うような環境で働いていると、自分の身を守るために不都合な出来事は隠したくなってしまっても不思議ではありません。
施設をそのような風土にしないよう、普段からの取り組みが大切ですね。
とにかく、介護職が事故を起こしても、発見しても、介護職の責任が問われたり、評価が下がったりしないようにしましょう。
そうすることで、利用者、介護職、施設を守ることができます。
報告書を書くのがめんどうだから
報告書を書くのがめんどうだ、と思って、事故を見て見ぬふりするケースがあります。
たとえばおむつ交換の時に、足に皮下出血を見つけたとします。
通常なら事故報告書の記載ケースですが、見なかったことにして介助を終えてしまうのです。
事故報告書を書くのに手間がかかるから「これぐらいなから報告しなくても大丈夫だろう」という思いが働くのです。
また、夜勤を1フロアに対してひとりで行う施設だと、転倒事故を発見しても隠してしまうケースが考えられます。
他に人がいないと、つい楽な方に走ってしまうわけです。
これは特別なことではないと思います。
人間だれしも弱い部分があるので、どの人にも起こりえることなのではないでしょうか。
職業倫理が問われるところですね。
ただ、転倒などの事故が起こった場合、高齢者だと時間が経ってからどのような症状が出るかわかりません。
たとえば、転倒して実は頭を打っていたとしましょう。
直後に症状が出なくても、しばらくしてから慢性硬膜下血腫を起こす可能性があります。
すぐに痛みが出なくても、実は足を骨折していることもあります。
ですから、必ず事故の報告はするようにしてください。
利用者を守るためにはもちろん、自分自身、そして施設を守るためにも重要なことです。
まとめ
介護事故の隠蔽について書いてみました。
事故を起こしたり、発見したりすることは、だれひとり望んでいません。
基本的に起こそうと思って事故を起こす人はいないでしょう。
ですから、個人を責めても意味がないのです。
事故が起きた時に大切なのは、事故の原因をしっかりと究明すること、そして再発を防止することです。
ですから、事故に直面したスタッフを決して責めず、次に起こらないようにするためにどうするか、ということにフォーカスするようにしましょう。
そして、そのことが施設の風土として定着するようにしなければなりません。
つまり、全スタッフの共通認識とすることが重要です。
このことは、事故の研修はもちろん、普段からも何度も発信する必要がありますし、そのようにみんなが理解できるよう、実際に全員でかかわらなければなりません。
では、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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