これからケアマネの仕事をする人「ケアマネジャーには、居宅ケアマネジャーと施設ケアマネジャーがあるよね?同じケアマネジャーの仕事でも、大きくちがうって聞いたことがあるんだけど、自分にはどちらの仕事のほうが合っているのかな?」
こんな疑問を解決します
この記事の内容
同じ試験を受けて、同じ研修を修了するとはいえ、施設ケアマネと居宅ケアマネでは仕事の内容がけっこうちがいます。
今回はそのあたりをまとめていきます。
施設ケアマネの仕事については、別の記事で詳しく書いていますので、そちらもご覧ください。
施設ケアマネと居宅ケアマネのちがい
施設ケアマネと居宅ケアマネのちがいをまとめると、次の4点に集約出来ます。
ざっくりいうと、施設ケアマネは利用者もサービスを提供してもらう職員も、すべて自分の施設の中にいます。
利用する単位数も決まっており、居宅とちがって要介護区分で上限がありません。
また、介護報酬の申請についても、たいていの施設では専属の事務員がいるため、施設ケアマネがすることはありません。
対して居宅ケアマネは、利用者も施設外ですし、支援をしてもらうサービス事業所も別法人になります。(自分の法人のサービスを使う場合も、書類などは必要)
また、要介護度によって使える単位の上限があるため、サービスの種類や回数の管理が必要になります。
ですので、利用者支援や連携をするのに移動しなくてはならなかったり、必要な書類が多くなったりします。
あと、居宅介護支援事業所意外のサービス、たとえば訪問介護や通所介護といったサービスの介護保険法上の決まりを把握しておかなければなりません。
まとめると次のようになります。
- 利用できるサービスがちがう
- アセスメントのしかたがちがう
- 支援のポイントがちがう
- 作成する書類や作業がちがう
掘り下げていきます。
利用できるサービスがちがう
施設と居宅のケアマネでは、利用できるサービスがちがいます。
利用できる事業所のちがい
【居宅】それぞれのサービス事業所に依頼。事業所の変更も可能
【施設】施設のスタッフでサービスを提供。他の事業所に頼むのは×
居宅のケアマネは利用者にサービスを提供してもらう事業所を選ぶことができます。
デイサービスはA事業所、訪問介護はB事業所、福祉用具はC事業所といった感じです。
そして、A事業所のデイサービスが利用者にあわないと判断したら、D事業所のデイサービスに変更することができます。
いっぽう、施設は利用者へのサービスを施設のスタッフで行わなければならないとされています。
ですから、施設ケアマネは、自分の施設のスタッフに依頼し、サービスを提供することになるのです。
仮にスタッフのサービスが十分でないと感じても、他の事業所にお願いする、というようなことができません。
サービスの質が十分でないときの対応のちがい
【居宅】事業所を変更
【施設】スタッフにかかわって質の改善をはかる
施設ケアマネもかかわって、サービスの質を改善していかなければ、利用者に必要なサービスはできないのです。
アセスメントのしかたがちがう
アセスメントのちがい
【居宅】ケアマネがすべて行う
【施設】専門職がそれぞれ行い、ケアマネに集約する
アセスメントの目的は同じです。
利用者のニーズ、課題を抽出することです。
しかし、方法が少しちがいます。
居宅ケアマネはすべて自分でアセスメントをします。
利用者の自宅にお邪魔し、ADLや普段の生活状況、家族の状況、それらの情報を集めていきます。
施設ケアマネの場合、同じ施設に介護職、看護職、セラピストといった各専門職がいます。
アセスメントは各専門職がそれぞれ行い、ケアマネに情報を集約します。
そこにケアマネが聞き取った内容をあわせ、すべての情報を総合して分析し、ニーズ、課題を抽出していきます。
支援のポイントがちがう
居宅ケアマネは自宅で生活する高齢者の支援をします。
その際のポイントは次ようになります。
- 食事、排せつ、入浴機会の確保が最優先
- 自宅でできるだけ長く生活するために
- 介護者の生活を守る。負担軽減
いっぽうで、施設ケアマネジャーが支援するのは施設に入所している高齢者になります。
ですから、自宅での支援で最優先すべき「食事、排せつ、入浴機械の確保」については、確保されている状態となります。
その上で、いかに施設で自分らしい生活を営んでもらえるようにするか、というのがポイントとなります。
ただし、介護老人保健施設については在宅復帰が目的の施設になるので、自宅に戻ったときの生活を想定して、施設での目標を設定する必要があります。
仕事の動きがちがう
居宅ケアマネにはあるけれど、施設ケアマネにはない書類や仕事があります。
まとめると次のようなものです。
居宅ケアマネにはあるが施設ケマネにはない仕事
- 市役所に担当の届けの提出が必要
- サービス利用票を作成し配布しなければならない
- 事業所に提供票を配布しなければならない
- 介護保険の給付管理をしなければならない
- 事業所にケアプランを配布しなければならない
- 毎月の利用者宅を訪問してのモニタリング
だいたいこんな感じですね。
それぞれを簡単に説明します。
市役所に担当の届けの提出が必要
居宅ケアマネは、利用者が介護保険を利用してサービスが受けられるよう、またサービスを提供した各事業所に介護報酬が提供されるよう、保険者である利用者が住んでいる市役所に、自事業所が担当である旨の書類を提出しなければなりません。
サービス利用票を作成し配布しなければならない
居宅ケアマネは、毎月、介護サービス利用の予定と、介護保険の単位をどれぐらい利用するかを記載した「サービス利用表」を作成し、利用者に説明、交付しなければなりません。
事業所に「サービス提供票」を配布しなければならない
利用者にサービスを提供してくれる事業所に対して、毎月の予定を記載したサービス提供表を渡さなければなりません。
ここにはサービス利用表と同じく、介護保険の単位をどれぐらい使っているかが記載されています。
介護保険の給付管理をしなければならない
サービスを提供する事業所は、予定が終わったらすぐに利用した日にチェックを入れ、「サービス提供票」を利用実績として居宅ケアマネに提出します。
これをもとにケアマネは国民健康保険団体連合会に介護報酬を請求するのです。
事業所にケアプランを配布しなければならない
サービスを提供してくれる事業所に、ニーズや課題、サービスの目的、目標を書いたケアプランを配布しなければなりません。
これを見て各事業所は必要なサービスを考え、提供してくれます。
毎月の利用者宅を訪問してのモニタリング
居宅ケアマネは、担当している利用者の自宅を毎月訪問し、モニタリングしなければなりません。
生活拠点でモニタリングするように定められているのです。
ですから、住宅型有料老人ホームや高齢者専用住宅に入居している人に対しては、それぞれの施設にモニタリングに行く形になります。
まとめ
施設ケアマネジャーと居宅ケアマネジャーのちがいについて書いてみました。
私は両方とも経験しましたが、どちらが大変か、というのは人それぞれの感じ方だと思います。
ひとつ大きなちがいをあげると、居宅ケアマネジャーの方が外部とのつながりをたくさんつくることができます。
ケアマネジャーの仲間が増えたり、サービス事業所のかたと仲良くなったり、有志での勉強会のお誘いがきたりと、交流する場面を多く持てるのです。
施設ケアマネの場合はほとんどそういう機会をもつことがありませんでした。
地域にもよるでしょうが、お誘いの連絡もあまりありません。
ですから、みずからアンテナを立てて、積極的に情報収集しないと機会を持つことができませんでしたね。
あと、介護保険法に詳しくなるのも居宅ケアマネジャーですね。
把握していないと仕事に支障が出るので、必然的に覚えるようになります。
施設ケアマネジャーのメリットとしては、施設の重要ポストになるので、副施設長や施設長などの管理職に昇進しやすいです。
どちらを選ぶかは、自分が将来どのようになりたいか、との長い目で見て考えるのもいいかもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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