回想法について知りたい人「認知症の回想法について知りたい。認知症の改善に効果的な療法として回想法があるって聞いた。回想法っていったいどんなものなの?詳しく知りたいな。
こんな疑問を解決します
この記事の内容
こんにちは、せいじです。介護の仕事を20年以上しており、現在は介護の研修の講師やコンサルタントの仕事をしています。
さて、認知症の改善に効果があるとされる回想法をご存じでしょうか?回想法とは、昔を思い出すことで認知症の進行を遅らせたり、症状を改善する効果のある非薬物療法です。
認知症は根本治療のない病気です。発症すると徐々に進行し、人として必要な様々な機能を失い、適切に行動できなくなります。
薬物療法によって進行を遅らせたり、症状を軽減することもできますが、薬物では副作用も発生します。ですから、薬物療法よりも非薬物療法を優先して実施することが適切なのです。
というわけで、今回は認知症の非薬物療法のひとつである回想法にいついて解説します。
認知症の回想法とは?効果ややり方、注意点などを解説します
回想法とは、昔の写真や映像、昔馴染みの物品、思い出のある品物を見ながら過去について話しをすることによって、認知症の進行を遅らせたり症状を軽減したりする効果がある非薬物療法です。
認知症になると、日常生活に影響を及ぼすほどの物忘れや、時間の感覚や場所の把握などができなくなるといった症状が現れます。
そして、それらの症状によって自分に対する自信を失い、不安にな気持ちに苛まれるなどし、新たな症状が引き起こされたりするのです。
具体的には、不安からうつ状態になったり、精神的に落ち着かずに徘徊がひどくなったりといったことです。
このような症状が見られると、本人もちろんのこと、介護者にも大きな苦しみになります。なぜなら、介護が困難になるからです。
回想法を実施すれば症状が改善でき、介護者の負担を軽減することができます。介護者の負担を軽減できれば、自宅で生活を続けられる可能性が高まることになります。
回想法にはどんな効果がある?
では、回想法には具体的にどんな効果があるのでしょう?効果をまとめると次のようになります。
回想法の効果
- 認知症の進行を防止する
- 認知症の症状を軽減できる
- 日常生活が充実する
それぞれ掘り下げていきます。
認知症の進行を防止する
回想法では、昔を思い出すことによって脳が活性化する効果があります。脳が活性化すると、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。
認知症の症状を軽減できる
回想法には、認知症の方の精神状態を安定させる効果があります。その理由は次の通りです。
回想法で精神状態が安定する理由
- 自分に自信を取り戻すことができる
- 孤立感、孤独感が解消できる
- ポジティブな気持ちになることができる
自分に自信を取り戻すことができる
認知症の方は、記憶障害によって自分に自信が持てなくなっていきます。新しいことを覚えられなくなるからです。ですから、自分が物忘れをすることによって、自分に対する信用が失われていくんですね。
認知症の初期症状では、新しいことを覚えられなくなります。すぐに忘れてしまう自分に対して、
「自分はなんてダメな人間なんだ」
そんな風に考えてしまうわけです。
しかし、昔の記憶は保持されやすいため思い出すことができます。きちんと覚えている自分を知ることで、
「自分も覚えていることができる!」
と、自信を取り戻すことができるのです。
孤立感、孤独感が解消できる
また、回想法では孤立感、孤独感を解消する効果があります。
回想法はスタッフと認知症の方のマンツーマンで実施する個人回想法と、10人単位のグループ行うグループ回想法があります。グループ回想法では、みんなで昔の写真などを見ながら話しをするのですが、回想法を繰り返す中でメンバーの人間関係が構築されていきます。
人との関係を持てるようになることで、孤立、孤独になりがちな高齢者の環境を改善することができます。
ポジティブな気持ちになることができる
昔を思いだすことは、ポジティブな気持ちになりやすくなります。なぜなら、思い出話しには、なつかしさや楽しさを感じやすいからです。
ですから、前向きな気持ちになりやすくなるんですね。
日常生活が充実する
回想法によって人間関係が広がると、日常生活の充実につながります。回想法での人間関係が日常生活でも生かされて人との関わりができ、充実感が満たされるからです。
介護施設で生活している利用者だと、日々の楽しみに大きな制限がかかります。
私たちみたいに自由にお出かけしたり、趣味に興じたりすることができないからです。ですから、施設内での人間関係の広がりは、QOLの向上につながるのです。
回想法のやり方
次に、回想法のやり方について見ていきましょう。ここではグループ回想法のやり方について見ていきます。
グループ回想法は、参加者6~8名と、スタッフ2名で実施します。そして10回程度を1クールとし、繰り返し実施していくんですね。
回想法を実施するにあたって必要となることは次の通りです。
回想法に必要なこと
- 対象となる参加者
- 参加者の生活史を把握する
- 昔を思い出せるもの
掘り下げていきます。
対象となる参加者
回想法によって認知症の改善を試みたい人を選定します。ただし、どんな人でも効果があるわけではありません。回想法を実施するためには、昔を思い出して話しができるコミュニケーション能力が必要になります。
認知症が進行すると、コミュニケーションが図れなくなる場合があります。少なくとも、場面場面で会話が成立する程度のコミュニケーション能力が求められます。
また、メンバーの相性も効果に関係してきます。最初から相性の悪い人同士になるのは避けた方がいいでしょう。
参加者の生活史など
次に、参加者の生活史などを把握しましょう。生活史を把握することによって、話しの展開を考えつつ、それぞれ触れてほしくない話題については避けるようにします。
昔を思い出せるものを用意する
そして、昔を思い出せるツールを用意してください。ツールとしては、次のようなものが挙げられます。
回想法で必要となる道具
- 写真
- 映像
- 流行したもの
- 思い出の品物
- 昔を感じるような香り など
昔を思い出すことができる道具を使うことによって、記憶が蘇りやすくなります。
認知症の回想法を実施する際の注意点とは
最後に、回想法を実施する際の注意点についておさえておきます。注意点をまとめると、次のようになります。
回想法を実施する際の注意点
- プライバシーに配慮する
- 記憶の間違いを否定したり訂正しない
- 思い出すことを無理強いしない
- 楽しく終わる
それぞれ掘り下げていきます
プライバシーに配慮する
人はそれぞれ触れてほしくなかったり、思い出したくない過去があったりします。回想法では、そのような事柄には触れないように配慮する必要があります。
ですから、あらかじめ参加者の生活史を把握し、触れてはいけない事柄を把握しておきましょう。
記憶の間違いを指摘したり訂正しない
参加者が昔の話しをする中で、時には事実と異なる話しがでることがあります。しかし、記憶の間違いを指摘したり、訂正してはいけません。なぜなら、回想法の目的は正しい話しをすることではないからです。
たとえ話しが事実と異なっていても、回想法の効果が得られれば良いのです。
ですから、他の参加者が訂正しようとした場合、スタッフは話し手の話しに耳を傾けるよう誘導していかなければなりません。
思い出すことを無理強いしない
認知症の方は、脳が疲れやすい状態にあります。ですから、回想法を実施する中で疲れた様子が見られたら、無理に続けないようにしましょう。
また、なかなか思い出せない話しであったり、思い出したくないような話しについても、無理に思い出させるようなことをしてはいけません。
楽しく終わる
回想法に限らず、心理療法においては終わり方(クロージング)が大切になります。精神的に沈むような形で終えてしまうと、そのあとの日常生活に影響を及ぼすことがあるからです。
そうならないように、最後はポジティブに終われるように誘導する必要があります。楽しい気持ちで終えるようにしてください。
認知症の回想法とは?効果ややり方、注意点などを解説します:まとめ
認知症の回想法について書きました。この記事をまとめます。
回想法の効果
- 認知症の進行を防止する
- 認知症の症状を軽減できる
- 日常生活が充実する
なお、認知症の症状の詳細について知りたい方は、下記のリンク記事をご覧ください。
ということで、今回はこのへんで終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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