帰宅願望に悩む介護職「夕方になると「家に帰る」と言って落ち着かなくなる利用者さんがいるのよね。荷物を抱えて施設をの廊下を歩き回るの。エレベーターや階段を使って施設から出ようとされるので、対応がとても大変。なにか良い対応法はないかな。
こんな悩みを解決します。
この記事の内容
認知所の利用者で、夕方になると帰宅願望が出てくる方がおられます。
これを夕暮れ症候群と言います。
夕食の準備などに追われている最中、帰宅願望の方に対応するのはなかなか大変ですね。
しかし、利用者に寄り添った対応をすることで、帰宅願望を軽減することができます。
ポイントはその人の居場所づくりです。
というわけで、今回は認知症利用者の帰宅願望(夕暮れ症候群)への対応方法について書いていきます。
なお、認知症の周辺症状については、下記の記事に書いています。
帰宅願望、夕暮れ症候群とは
帰宅願望、夕暮れ症候群とは、認知症の周辺症状のひとつです。
実際に現在住んでいる家や施設にいても「家に帰らないといけない」と言って、外に出ようとします。
中には常に大きな荷物をまとめて、毎日その荷物をかかえながら廊下をさまよう方もおられます。
夕暮れ症候群と呼ばれる所以は、女性の場合、子供や夫が帰宅する時間帯である夕方に帰宅願望が現れやすいからです。
- 子供が帰ってくるから家にいないと心配する
- 夫が帰ってくるので、食事を作らないといけない
と言って帰宅しようとします。
静止すると、暴言や暴力が出る方もいますね。
本人としては「帰りたい」という欲求を邪魔されるわけですから、当然ではあります。
子供や夫のことを考えると、少しでも早く変えられなければならない、と感じるでしょうから、その欲求は強力です。
ですから、なんとかして帰宅しようとしますし、静止されると怒りの感情も出やすくなります。
帰宅願望、夕暮れ症候群の原因
中核症状の見当識障害が原因となっています。
見当識障害とは、時間や場所、季節といったことが正しく認知できない障害です。
ですから、今住んでいる場所や、自分が今どこにいるのか、ということがわからなくなるのです。
記憶障害により、自分の記憶に残っている家が、昔の家に戻っていることも原因となります。
また、施設や今住んでいる家の環境に、本人がなじんでいないことも原因のひとつです。
- 精神的に不安
- ここにいたくない
- 自分の居場所がない
- 仲良くできる人がいない
このような環境から逃れたい、と帰宅願望につながるのです。
帰宅願望、夕暮れ症候群の対応方法
帰宅願望、夕暮れ症候群に対する対応方法について書いていきます。
ポイントは次の通りです。
- 帰りたい思いを否定しない
- 帰りたい気持ちに寄り添い理由に向き合う
- 落ち着いて生活できる環境づくりをする
掘り下げていきます。
「帰りたい」思いを否定しない
先に絶対にやってはいけないことをあげておきます。
それは、本人の世界を否定しないことです。
つまり「家に帰りたい」という認知症の方に対して「ここが家でしょ!」「あなたは施設に入所したんです。ここにいてください」などと、否定してはいけないということです。
帰りたい気持ちに寄り添い理由に向き合う
利用者の帰宅願望に対して、介護職や支援者はその気持ちに寄り添いましょう。
そして、帰りたい理由に向き合いましょう。
たとえば「娘が帰ってくるから家に帰りたい」と訴える利用者がいたとします。
娘が帰ってきたときに自分がいなかったら娘が困る、寂しい思いをする、心配をする、と利用者は考えているわけです。
その娘を思う気持ちに寄り添い、話しをするのです。
- どこの学校に通っているのか?
- 何時ぐらいに帰ってくるのか。
- 娘さんはいくつなのか?
- どんな娘さんなのか
そうやって話していくうちに「帰りたい」ということから、少しずつ娘さんの話しに移っていくことがよくあります。
結果、利用者が抱えている「娘が帰ってくるから家に帰らなければならない」という問題の解決になり、落ち着いて過ごすことができます。
落ち着いて生活できる環境づくりをする
ただし、帰宅願望の裏には「今の場所での生活に不安や不満を感じていて、ここから出たい」という気持ちが隠されていると考えられます。
ですから、今の場所で穏やかに生活ができるよう、支援しなければなりません。
たとえば、今の環境で利用者が自分の居場所と感じられるようの支援が必要となります。
- 役割を持ってもらい、周囲から必要とされていると感じてもらう
- 使い慣れた家具などで自分の空間と感じてもらう
- 他の利用者や職員と関係を築き、自分の居場所と感じてもらう
帰宅願望が出た際の対応によるその場しのぎではなく、根本的な理由に目を向けることによって、帰宅願望の本当の原因を解決することができるのです。
まとめ
認知症の周辺症状である帰宅願望、夕暮れ症候群について書きました。
周辺症状については、かかわり方で症状を軽減することができます。
そのための原則としては「利用者の訴えを否定しない」ということです。
そして、利用者が訴えている世界の理解に努めること、その問題解決を支援すること。
また、根本原因はなにか、ということを考えることが大切です。
つい忙しさに流されて、利用者に対してきつい口調や厳しい表情で対応する人がいますが、逆効果にしかならず、利用者も介護者も追い込んでしまうことになるので、絶対に避けましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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