介護福祉士の試験勉強していると「マズローの欲求五段階説」というのが出てくるんだよね。他にも自己実現理論とか欲求階層説って言われているみたいだけど、学校の勉強みたいで現実につかえるものではないよね?ただなんとなく覚えているだけなんだけれど、いまいちよくわからないし、介護につかえるものなのかな?
こんな疑問を解決します
この記事の内容
介護職としては、介護福祉士や介護支援専門員の試験を受験する際に出てくる「マズローの5段階欲求説」ですが、実は利用者にも、ご家族にも、そして職員を指導する際にもつかうことができる考え方なのです。
理解して活用してすれば、良い介護を提供できるだけでなく、職員の成長を実現したり、自分の人間関係を良好なものにすることができます。
マズローとはどんな人?
アブラハム・マズロー(1908年4月1日~1970年6月8日)はアメリカの心理学者です。
マズローは人間心理学を専門分野としており「自己実現理論」において、人間の欲求を5段階にわけて理論化しました。
これを欲求5段階説ともいいます。
マズローの欲求5段階説の中身
マズローの欲求5段階説を構成しているものは次の5つです。
数字が1に近づくにつれて高レベルな欲求で、下の階層の欲求が満たされれば一段上の階層の欲求があらわれるとされています。
それぞれの欲求を掘りさげて解説していきます。
生理的欲求
生理的欲求とは、人間の基本的な欲求を言います。
基本的な欲求とは、人間が生きていくうえで欠かせない欲求のことです。具体的には次の欲求があてはまります。
生理的欲求は、マズローの説ではもっとも低いレベルの欲求とされています。
しかし、人間が生きていくうえでは絶対に必要な欲求であり、なくてはならないものです。
安全と安心の欲求
安全と安心の欲求は「安全、安心に生活したい」という欲求です。
安全が確保された家に住み、安心して生活したい、という気持ちであったり、治安のよいところで住みたいという欲求があてはまります。
自宅から遠く離れたはじめて訪れる町であったり、はじめて行く外国では、なんだか不安になりますよね。
そこが安全で安心な場所なのかがわからないからです。
所属と愛の欲求(社会的欲求)
自分が社会に必要とされている、なんらかの役割をもち、それを果たすことができていると感じたい欲求です。
具体的にいうと、家や学校、会社、スポーツの団体、といったチームや組織に所属していたいという欲求です。
孤独感や人から受け入れられていない、社会の役に立っていないと感じると、この欲求が満たされていない状態になります。
承認の欲求
自分が所属するチームやグループといった集団から、認められたいという欲求です。
地位や名誉など、周囲から認められるようなことがらによって、満たすことができます。
承認の欲求には低次、高次の2種類にわけられるとされています。
低次の欲求を満たすことで高次の欲求があらわれますが、マズローの説では低次の欲求にとどまりつづけることはよくないと説明されています。
低次の承認の欲求
他者からの評価によって得られる承認をさします。
たとえば、地位や名誉、尊敬、利権といったことがらで満たすことができます。
他者から奪うことでも満たすことができる欲求であるため、ここにとどまりつづけることは、他者からうばいつづけることになります。
高次の承認の欲求
高次の承認の欲求になると、他者からではなく自分自身の評価が重視されるようになります。
自己尊重感、自己肯定感、自分の能力を高めることによって、承認欲求を満たすことができます。
自己実現の欲求
ここまでの4つの欲求をすべて満たすことであらわれるのが、自己実現の欲求とされています。
自己実現の欲求とは、自分はなにものであるのか、どんな自分でありたいのか、どんなことを成し遂げたいのか、という問いに対して、自分の求める自分になりたいという欲求です。
マズローは自己実現の欲求を存在欲求ともあらわし、その欲求に至るまでの4つの欲求を欠乏欲求とあらわしています。
人は自己実現を満たすことで、優れた人間性を持つことができると説いています。
実際にどんな場面でつかえるの?
マズローの欲求5段階説は、実生活の中でどのように活用できるのでしょうか?
その具体的な事例をあげていきます。
子育てやプライベートな人間関係
マズローの欲求5段階説は、子育てに活かすことができます。
生理的欲求や安心と安全の欲求を満たしてあげることはもちろんですが、あたたかい家庭をつくることで、家族という愛につつまれた所属場所を提供することができます。
そして、成長過程で承認の欲求を満たしてあげることで、自分の可能性を否定しないで生きていけるようになります。
これはとても重要で、自分の可能性を信じることができるということは、自分を肯定することができるということになり、自己肯定感の高い人間に成長することができます。
自己肯定感が高ければものごとにポジティブに取り組めるようになり、自己実現にむけて行動できるようになります。
これは夫や妻、その他友人に対しても同様で、相手の所属場所をつくること、そして承認することで人間関係がよくなり、ともに成長できる関係を築くことができるのです。
部下や同僚の成長を支援
職場で不満や愚痴ばかり言っているスタッフは「所属と愛の欲求」や「承認の欲求」が満たされていないことが原因です。
ですから、その欲求を満たしてあげるようなかかわりが必要になります。
たとえば、本人の長所にスポットをあてて、それを活かすことができる役割を担ってもらうのです。
そして、やろうとしていること、やっていること、やりとげたことをとことん認めてあげるのです。
そうすることで2つの欲求が満たされて、指示されなくてもみずから考えて行動できる職員に成長していきます。
利用者の精神的な苦しみを癒し、自立に向けた支援
利用者さんについては、日本で数少ない「生理的欲求」や「安全・安心の欲求」がおびやかされている存在ではないでしょうか。
だって、トイレに行きたいと言ってるのに「おむつしてるからそこでしてね」と平気で言われるわけですから。
排せつ欲が満たされないですよね。
おかげで夜中にトイレをさがしまわって、睡眠欲も満たされないことになるわけで。
つまり、まずこの一番低次の欲求を満たしてさしあげないと、利用者の欲求は次の段階に進まないということになります。
徘徊や不穏とよばれる周辺症状は、これらも原因となっているわけですね。
認知症であろうとなかろうと、利用者が安心して排せつ行為ができる環境をつくることが、まず先決ではないでしょうか。
少なくとも「トイレに行きたい」と訴えたら、笑顔で対応してくれるような環境が必要です。
それは安全と安心の欲求を満たすことにもつながります。
そして、役割をもってもらうようつなげて所属と愛の欲求を満たし、感謝することで承認の欲求を満たしていく。
そうすることで、利用者が求める生活への欲求、つまり自立した思いを持つことができるのです。
というわけで、まずは排せつ環境から取りかかりましょう!
まとめ
マズローの欲求5段階説の説明と、実際の生活の中でどのように活用できるかを書いてみました。
ただなんとなく人と接するよりも、相手がどのような心理状態にあるのかを、論理的に分析することで人間関係が良好なものとなり、ストレスが減ったり、人の成長を支援できたりと人生は豊かになっていきます。
仕事でも私生活でも十分に活用できる理論ですので、ぜひ活用していただきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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